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今日のエッセイ 「新」とか「創作系」 2021年3月22日 

2021年3月22日

今日の話は、異論反論が出るかもしれないけれど、まあそんな考えもあるんだなあというくらいに受け止めておいてもらえるとありがたいです。と、先にリスクヘッジをするほどのことじゃあないのだけど。僕は「新」日本料理とか「創作系」料理という言葉は、掛茶料理むとうには使わないことにしているんだよね。
というのも、料理の世界で「新」とか「創作」とかいった言葉をわざわざ関することに意味がないと思っている。
そもそも、創作したり新しいものを生み出すことが「通常業務の一環」なのだ。

何かを生み出すことを生業としている職業って、料理だけじゃなくたくさんありますよね。例えばさ、陶芸だとして「創作湯呑み」とか「新急須」とか、言わないもん。違和感しか無い。画家に「創作系」って言わないですよ。創作がメインだもの。同じ理由でミュージシャンに創作系が無いように、料理にも創作系は無くていいかな。
古典があって、それを踏襲することが常になっている職業には「新作」という言葉がつくことがあります。その辺りは料理と共通するかもしれないですね。古典落語に対して新作落語とか。ただ、これだって「新」落語じゃなくて「新作」ですもんね。ミュージシャンが「新曲」を発表するのと一緒ですよね。
「新」日本料理とか「新」落語という言葉には「新ジャンルの」というニュアンスが含まれているんですよ。ミュージシャンが「新しいジャンル」を提案する感じかな。さすがに、僕には日本料理の新しいジャンルを作り上げるほどの技量は無いですし、仮に技量が会ってもそのつもりはないですからね。伝統の技術の延長に立って、しっかりと学びながら進化させていくことが「歴史の流れ」のなかで、ずーっと繋がってきてるのが日本料理です。ちょっとずつ創作を加えながら新作を作り出し続けることで、「結果として」新しいジャンルになっていたことに後の時代に気づくもんじゃないかと、僕はそんなふうに捉えています。

ほとんどの人、実は創作料理作ったことあるんじゃないですか?特に男子学生に多いですよ。腹が減ってしょうがないから、レシピとか知らないけれどなんとか料理して食べる。そしたら、料理名なんて付かないけれど美味しかった。そんな経験のある人も少なくないんじゃないかな。料理ってそんなもんなんですよ。本来はね。それが先年も蓄積されたら「日本料理」になっただけ。
こんなふうにゆる~い感じで捉えているので、あんまり「新ジャンルですよ」と謳うのは、僕にとってしっくりこないんですよね。

というだけの話です。
「いろいろ創作してるね」と言われるより「工夫してるね」と言われる方が嬉しいかなあ。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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