エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 端午の節句に食べ物にのせた願いごと 2021年5月5日

今日は端午の節句、こどもの日です。こういう節句などの行事に合わせた「行事食」という文化があるんだよね。海外でもクリスマスのターキーやケーキみたいなものがあるのだけれど、日本はとかく多い気がする。そもそも行事自体が多いのかな。

さて、端午の節句の行事食で一番古くからあるのは「ヨモギ」だね。ヨモギは漢方薬でも使われる薬草で、お灸にも使われている。端午の節句だと、ヨモギ餅にして食べることが多いかな。この時期は季節の変わり目だから体調を崩しやすい。だからみんなで薬草を摘んで、家族で食したり家臣に配ったりしていたんだって。奈良時代の話ね。

ヨモギの効能はいろいろあるけれど、大雑把に言えば「浄化作用」だ。ビタミンKが多いから「血液サラサラ効果」があって血行が良くなる。血が綺麗になるって言うよね。それから不溶性食物繊維が多いから「腸内環境改善効果」があって、便秘の解消とかむくみの改善とかにもきく。血行が良くなってデトックスが出来ると、結果的に美肌効果まで期待できる。
ヨモギ風呂にすれば、血行が良くなって冷え性の改善も期待できるし、抗酸化作用が強いからアトピー性皮膚炎なんかにも良いんだって。

行事というとなんだか儀礼的な意味合いを強く感じてしまうけれど、そのもとには「自然に対応して健康に生きる」という思いがあったんだね。

武家政権誕生以降には、男の子の成長を祝いこれからの成長を願うという意味合いが強くなってくる。今のお節句はここからだ。
立身出世の願いをこめて、出世魚である「ブリ」や「スズキ」が食卓に並ぶ。「カツオ」は勝男にひっかけた願掛けだし、海老や鯛は端午の節句に限らずお祝い事の定番食材だ。ひとつひとつの食材に願いを込めるというのは、日本独自文化なのかもしれないよ。喜ぶでコブとか、けっこうダジャレみたいなものが多いけどね。それでもこんなにたくさんの「願い」を「食べる」に詰め込むのは、面白い文化だと思う。

最近は子供が食べたいものを食べさせればいいということも多くて、カレーライスだとかオムライスだとか鶏の唐揚げだとかが食卓に並ぶ家もあるみたいだけどさ。年に一度のことだから「願掛け」があっても良いよね。しょせんは迷信かもしれないけれど、食文化にはこういう楽しみ方もあっていいじゃない。という遊び心でもあると思うんだ。

古代の日本で「季節の変わり目だから」という気持ちで始めた薬草配りも、その後生まれた「男の子の成長を願う」という願掛けも、どちらも思いは一緒だ。自分じゃない誰かの健康を願う。祈りに近い行為かもしれないね。
食事の効果のほどは横においといても、誰かのために祈るという行為は何かしらの良いことがありそうだと思っています。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

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