エッセイみたいなもの

今日のエッセイ どこからどこまでが「和食」なのか、意外と知らないよね 2021年5月6日

和食って一体何だと思います?ここ数年は「食の歴史」を調べるのが面白くて、なんとなく趣味のようになっているのだけれどね。そのうちに「和食」ってどこまでを指して言うの?というのがわからなくなってくるんだ。海外から入ってきた「洋食」と「和食」の境界線がすごく曖昧に見える。

外来の食文化が日本に定着していった料理は、身近なところにもそういうのはたくさんあってさ。

例えば、天ぷら。一度くらいは「天ぷらのぷらってなんだ?」って思ったことないですか?天ぷらの元になった料理は鉄砲が日本に入ってくるのと同時期にポルトガルからやってきたんだよね。
ポルトガルには「テンポーラ」という斎日があって、その期間は祈祷したり肉食をやめたりしていて、肉が食べられないもんだから物足りなさを埋めるために、野菜や魚を油で揚げたフリッターを食べていた。
というのが日本にやってきて変形したのが今の天ぷら。ね、完全に洋食スタート。

肉じゃがはもはや家庭料理の代表格とも言えるけれど、元々はビーフシチュー。100年くらい前にビーフシチューを見様見真似で作ろうとしたら、失敗しちゃったんだって。それが今の肉じゃが。ぜんぜん違うものだから和食で良いのかな。
豚カツは完全に世代で分かれるよね。豚カツ専門店に行くと「和食の割烹着」を着て、「和食の佇まい」の店で食べるところも多いから、和食だと感じるかもしれない。こうなったのはほんの半世紀くらいのもので、それまでは「まちの洋食屋さん」で提供されていた。というのは、少し上の世代の人たちには常識だろうね。豚カツというのは、誰かが言い出した「流行りの略語」だもん。正式名称は「ポークカツレツ」。名前のどこにも和食の要素がないでしょ。豚カツのカツってのはカツレツ。

そもそも、「油を大量に使う」という文化も、「肉をメインで食べる」という文化もかなり長い間はなかったんだから。

そんなことをずーっと考えていくとさ。
カレーライスはどう?もはや日本に定着していて、インドやネパールやタイとは全くの別物になってるもの。インドの料理人が日本のカレーライスを食べて「とても美味しい!なんという料理ですか?!」と言ったそうだよ。
ラーメンだって、もはや日本の外食産業の中では最もお店が多いジャンルのひとつだよね。インスタントラーメンにカップラーメンと、もう生活から切り離せないくらい。中国や台湾では「日式ラーメン」と言われていて大人気だそうだ。それだけ日本流に変化したんだよね。
ちなみに、日本でのラーメンの歴史は豚カツや肉じゃがよりもずーっと長いよ。初めてラーメンを作って食べたのは水戸光圀公だもの。

他にもかなりたくさんあるんだけどさ。もうどこからどこまでが和食といえるかわからないよね。
生活に根付いている。独自の進化をしている。というくらいの大雑把なくらいのカテゴリー解釈で良いんじゃないかな。
食は文化だから、これからもずっと交わり続けていくだろうしね。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

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