常々「料理は遊び」「食事は暮らしの中に寄り添うエンターテイメント」というようなことを言っています。そしてそれは、掛茶料理むとうのコンセプトでもある。
エンターテイメントは楽しくなくちゃいけない。楽しくなかったらエンターテイメントとは呼べないよね。当たり前だけど。その「楽しみ」というのはどんな要素から生まれているのだろう。ということを考えてみました。
ぼくは3つの要素があると考えています。「コンテンツ」「場」「分かち合う」の3つ。
コンテンツというのは、例えばコンサートやライブだったら音楽そのものだし、映画だったら映画そのもの。食事だったら、「料理」ということになるね。料理が美味しいということは、いい音楽いい映画と同じようなことなんだと思う。だけど美味しいだけじゃ物足りなさを感じるんだよ。
コンテンツは、更に3つの要素に分かれていて「表現」「ストーリー」「キャラクター」かな。
「表現」というのは漫画でいうと「絵が綺麗」とか「伝わる」という技術部分。言い換えれば「どう見せるか」だから、料理も味や盛り付けなんかに相当する。
「ストーリー」は物語だから、漫画や小説や映画の根幹でもあるよね。このあたりが料理の場合は難しいのかもしれない。なんだけれど、コースで仕立てたり、ひとつのお皿の中でちゃんとストーリーを描くことは出来るんだよね。ちゃんと意識してやっているかどうかが大切なところなんだけれど、どの料理を食べたときにどんな感情を持ってもらいたいのか、ということが大切だと思う。
「キャラクター」は個性。物語に登場する人物がそれぞれに豊かな個性を発揮するように、料理の世界でもそれぞれの料理だったり食材が個性を発揮していることが大切になる。
ということがコンテンツだ。
「場」は、文字通り場所。ライブハウスやコンサートホールの独特の雰囲気。良いよね。ぼく、あの雰囲気好きなんだ。ちょっと特別な空気があるじゃない。美術館とか映画館もね。普段の暮らしの近くにあるけれど、普段とは違う雰囲気というのが良いのかな。食事する場所は、掛茶料理むとうだったらお部屋だったり、縁側だったり、そしてそこから見える景色だったり、飾られている活花だったりする。
ここまでのふたつは、ぼくらお店側が提供することが出来る部分。だから、少しでも楽しみを大きくするために毎日ちょっとずつでも工夫を積み重ね続けている。
お店側でどうにもならないのは「分かち合う」。というのは人のことだ。楽しい気分を「誰と一緒に分かち合うのか」ってけっこう重要じゃない?自分が楽しい気分のときに、目の前の人が無感情だったらちょっと寂しいもんね。これはもう、どんなエンターテイメントであってもお客様におまかせするしかないのだけれど。
「好きな誰か」を一緒に連れていきたくなるお店にならなくちゃね。と思っている。
今日も読んでくれてありがとうございます。大きなコストを掛けなくても、ほんのちょっと手を伸ばした先にある「暮らしの中に寄り添うエンターテイメント」というのが、ぼくらの考える「いい時間」です。