エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 日本料理は「5」がお好き 2021年5月23日

日本料理ではいくつかの大切な数字があります。そのなかでも「五」というのは、ちょっと特別な位置づけにあるかもしれません

五法・五味・五色・五適・五覚という言い方をすることもあるんだけど、あんまり日常的には使わないかなあ。内容はしっかり理解しているけれどね。一応カンタンに説明しておこうかな。

◆五法(ごほう)
「切る」「煮る」「焼く」「蒸す」「揚げると」いう調理法のことね。一番先に「切る」がくるのが日本料理っぽい。ちなみに、「割烹」というのは割=切る、烹=煮炊きで、料理のこと。だから、割烹と料亭という区分けをすることがあるけれど、言葉の意味からすれば変な話だ。あ、これも切るが最初に来るね。

◆五味(ごみ)
「塩味」「甘味」「酸味」「苦味」「辛味」の5つの味のこと。ちなみに「塩味」の読み方は「えんみ」ね。最近はうま味を加えて六味ということもある。美味しさがわかりやすいのが前半で、後半は舌覚が成長してわかるようになってくる感じかな。前菜みたいに料理を数種類盛り込むときは、五味のバランスを考えてるって知ってた?

◆五色(ごしき)
「白」「黒」「黄」「赤(紅)」「青(緑)」の五色。盛り付けの時にめっちゃ使う考え方。なんか黄色が足りないなとか、赤が多すぎるとか、そんなふうにしてバランスをとるんだ。ぱっと目に入ったときに美味しそうに感じる色のバランスなんだろうね。緑を青と呼ぶのは「和語」だから。ホントに「ブルー」の食材ってあんまりないし、食欲の減退を促す色だったりする。

◆五適
「適温」「適材」「適量」「適技」「適心」のことらしい。温かいものは温かくとうのが適温だし、適材というのは季節感だったりするし、相手の体調や年齢に合わせた食材を使いなさいということだったりする。適量は言わずもがな、だね。適技ってのは技工に凝りすぎて本分を外れるなよという戒めだね。適心はおもてなしのこと。五適で考えると「大食いチャレンジ」メニューは外れまくりだね。

◆五覚
「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚」「味覚」で、五感と一緒だ。見た目が美味しそうで美しくて、いろんな歯ごたえで音を楽しんで、香りが良くて、舌触りが良くて、美味しい。という完璧な一品を作るというよりも、複数の料理でいろんなものを楽しんでもらうということの方が多いかもね。

若干こじつけみたいなところもなくはないけれど、みんな「五」だ。よく揃えたもんだと思うよ。「五法」「五味」「五色」「五適」「五覚」もちゃんと5つあるしね。
ここには出てきていないけれど、ひと皿に料理を盛り込むときも基本は五だよね。五種類の料理を盛り込んでバランスを取る感じ。盛り込み料理の品数は「3」「5」「7」「9」というのが基本だけど、最も頻繁に使われる数字は「5」。六種類出したいときは、一品だけ別皿にして調整することもあるね。

おもしろいことに、全部奇数なんだよ。だから、お皿が偶数角か角のないもの。丸いか四角いか、六角、八角ってのが多いのかもしれない。ということは今気づいたんだけどさ。なんだか面白いなと思ってね。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

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