どんなものを食べて暮らしているのかがわかると、その地域の文化や特徴がわかります。というか、地域の文化や特徴が食べ物や居住環境なんかに影響するんだよね。
例えば、醤油の味に地域差があるということを知っている人は結構いると思うんだけど、それがどんな特性の地域がどんな醤油を主流としているかの傾向があるということは知らない人のほうが多い。ざっくりと大まかに言ってしまえば、海沿いのまちでは比較的甘い傾向にあるし、海から離れた山岳部では塩味が強い傾向にある。ってこと聞いたことある?
すごーくシンプルな話なんだよね。海が近い地域って、海産物を食べることが多いじゃない。現代だとそんなに顕著な差にはならないと思うけど、一昔前はそうだった。それは、流通の問題でどうしてもそうなっちゃうんだよ。山菜類のほうがずっと貴重で、魚やワカメを食べるほうが自然という環境だもんね。だから、調味料から塩分補給をする必要性が低いんだ。食材から塩分補給が出来るから。食材自体が塩味を含んでいると、あまりしょっぱい醤油や味噌だと料理との相性があまり良くない。ということもあるね。
逆に山岳部では塩というものはとても貴重になる。これちょっとしょっぱいんじゃないの?と言いたくなるくらい塩味を強めにして塩分補給をしておかないと、体が持たないんだよね。最近は塩分過多のせいで成人病が増えているけれど、本来塩分は動物が生きていく上で欠かせない栄養素のひとつだ。だから、塩が貴重だった環境にいると、自然とそれ以外の調味料も塩味の強いものになっていくというわけ。当然だけど、山でとれる食材だって、海のものと比べれば塩分摂取量はかなり少なくなるしね。
ものすごく大雑把な分類だけど、海沿いの醤油は甘口が多くて山の方はしょっぱい醤油が多い傾向にある。っていうのは、地域属性で見て取れる。
他にもあるよ。同じ醤油の話なんだけれど。寒いところの方が、しょっぱい傾向が強くなる。これも動物が体を維持するための仕組みが原因で、寒暖差が大きい地域なんかは特にそうなんだけど、体温調整に塩分が欠かせないから。それに、寒いと味覚も鈍るような感じするでしょ。だから、濃い目の味付けが好まれるようになるね。
逆に四国や九州の辺りに行くと、甘い醤油が増えてくる。東日本の人には信じられないかもしれないけれど、一部の地域では醤油の原材料に「砂糖」や「甘味料」が入っているんだって。以前母が鹿児島に行った時に驚いていたよ。甘い醤油に慣れていないもんだから、せっかく魚が美味しいのに普通の醤油がないってね。でもそういう文化圏なんだ。
気候以外にも味付けに影響していることがある。例えば労働環境。肉体労働が多い人は、全体的に濃い味を好むよね。これは、発汗量の影響だと言われている。汗ってさ。しょっぱいでしょ。なめること無いかもしれないけれど、しょっぱいんだよ。あれ、汗と一緒に体内のミネラルが外に出ちゃっているのね。そうすると、当然だけれど体内のミネラルがどんどん減っちゃう。それを補うために食べ物から塩分を摂取しなくちゃいけないってこと。
東京でご飯を食べるとしょっぱいって言うのは、関西人だけじゃなくて東海地方の人もそうなんだけどさ。東京って、江戸時代初期からしばらくの間8割が男性だったってことに由来する部分もある。インフラ工事が盛んだったから、土木建築の職人ばっかりの街だったんだよね。結果として、しょっぱい味付けが土地に染み付いちゃったという文化的な流れもあると言われているよ。
それが今でも残っている理由もあって、実は他県よりも肉体労働が多いから。肉体労働っていうと語弊があるな。みんな歩くでしょ?都会の人って。通勤するだけで軽く数千歩は歩くって人が多いんじゃないかな。東京に住んでいると気が付かないけれど、郊外ってほとんど車で移動するという人が多いからあんまり歩かないんだよね。実はそんなところも影響があるんだ。
ぼくらが料理を作るときも、土地属性を多少は加味して味付けをする。現代は全国が均一化してきていて、コンビニ出現以降はそれが加速しているからあまり気にしなくても対応できちゃったりするんだけどさ。なんだか、面白いよね。ちょっとしたことだけどさ。こういうのが積み重なって独特の郷土料理が生まれていたりする。
今日も読んでくれてありがとうございます。そう考えていくと、全国の味付けが均一化していってしまうのは寂しいし、食文化としてはもったいない気もするんだよね。