エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 料理に使うお酒の話「料理酒」って何だ? 2021年6月18日

ホント今更ですけど、「料理酒」ってなんでしょうね。ぼくが最後に「料理酒」として販売されているものを使ったのはいつだったかな。その時の経験から、漠然と「料理に使用しても美味しくない」「飲んでも美味しくない」もの、と思い込んでいてね。実際のところどうなんだろう。

そもそも、なぜ「料理酒」というものが存在しているのか。
そんなことを疑問に思ったことない?

だいたいね、料理にお酒を使うんだったら、普通に日本酒を使えばいいじゃんね。元々がそうだったんだし、ぼくらみたいな料理の専門家は日本酒を使う。それで万事解決のはずなんだ。だから、わざわざ「料理酒」というものを作る必要がないと思うのだけど、それなりのニーズがあったからこそ市民権を得たはずだ。基本的にニーズのないものは売れないからね。そして、そこには日本酒とは違うなにかの工夫があるはずだ。

普通に考えれば、日本酒というカテゴリーの中に「料理酒」というものが存在することが考えられるよね。「靴」というカテゴリーの中に「運動靴」とか「野球用の靴」とか。つまり、何かの用途に特化しているものだ。その用途に最も適した形に進化したという考え方ね。となると、元々あった日本酒に工夫をして料理に適した形に進化したお酒だというのが、言葉上から考えられる正当な料理酒ということになる。

だけど、ここにひとつの疑義が生じる。
「ほとんどの「料理酒」は、料理を美味しくしてくれない。」
これだ。
日本料理においては、日本酒というのは定番の調味料。かなりの頻度で使うのね。それはもちろん、日本酒を使うことで料理が美味しくなるから。なのに、スーパーで売っている「料理酒」と書いてあるものは、普段料理に使っている日本酒と比べて、料理が美味しくならない。なかには日本酒よりも料理に適したものが存在するのだけど、ほとんどはそうならないんだよ。
ということは、「料理のために進化した酒」ではないよね。

そうなると、別の理由が存在するはずだ。
さくっと答えを言ってしまえば「安くするため」だ。比べてみるとわかるのだけれど、一般的な飲用の日本酒と比べて料理酒のほうが価格が安いんだよね。販売価格が安いということは、それだけのニーズがあってのことだよね。そこには「酒税法」が関係している。
知っている人も多いと思うけれど、流通している「酒類」には「税金」がかかっている。だから税金の分だけ販売価格が高くなるよね。当たり前だけどさ。ただ、この酒税法は「お酒として飲むもの」かつ「アルコール度数1%以上」に対して発生するという特徴がある。工業用アルコールには「酒税法」は適用されないってことね。だって「飲まない」もの。

そこで、メーカーは考えた。料理にだけ使うのであれば「飲まない」酒で良いんじゃないかと。「飲む」ということに適していないお酒にすれば、安く販売することが出来るぞ、とね。そうやって価格競争に挑んだわけ。価格が安いほうが、当然売上が上がるもんね。他社との競争を勝ち抜くことが出来る。
だから、一般的な「料理酒」には「塩」や「酢」をわざわざ入れてあるんだよ。そうやって「飲まない」ということの理由にしているのね。料理にしか使わないんだし、料理するなら大抵「塩」は使うし、という論理になるのかな。だから、「料理酒」というものを使うのなら「塩」を少し減らさないとしょっぱくなるということだね。

「料理酒」という商品名称には、ちょっとした悪意を感じるのは考えすぎだろうか。料理が美味しくなるための酒ではないのだけれど、「料理酒」という名称にすることで「料理専用に特化」という印象を与えているよね。なんとなく印象操作をしているような。こういうことを言うとメーカーさんに叱られそうだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。料理を美味しくするためのお酒は、純米酒が良いよ。吟醸や大吟醸じゃなくて純米酒。アミノ酸などの旨味成分がたくさん含まれているからね。お酒を飲む人がいるんだったら、併用するほうがリーズナブルだったりするんじゃないかな。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

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