エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 人類史に大きな影響を与えた「お酒」ってなんだろう。 2021年6月23日

お酒の話は続きます。近年は特に「お酒はあまり飲まない」のがカッコいいという風潮が高まってきているみたいなんだよね。実際現場では、掛茶料理むとうのお客様を見ていても感じる。飲みたくない人に強要することも無くなったしね。

「お酒を飲まない人もいるし、お酒を飲む人もいる。それぞれに居ても良いよ。」ということだったら、それはバランスが取れていて良いことなんだと思う。「飲まないほうがカッコいい」まで振り切っちゃうのも違う気がするけどね。

というのも、お酒を飲むこと自体がデメリットばかりじゃないからだ。

お酒の歴史について、少し掘り下げてみようかな。

世界中で「酒」といものが飲まれるようになったのが興味深くてさ。文明の交流がなくても、それぞれの文明で独自に「酒」が発生して発展しているんだよね。なんでこんなものを飲むようになったのか、と考えると少し不思議な気がする。人類史で考えると「生存のための食品」ではないからね。無くても動物として生きていくことは出来るはず。なのに、人類に大きな影響を与える存在になっているのが「酒」だと考えると、不思議な感覚にならない?

もうひとつ不思議な話がある。酒と呼んでいるのは「飲用に適したアルコール」のことだよね。化学物質としての名前は「エタノール」もしくは「エチルアルコール」。化学式はC2H6O。このエタノールの仲間に「メタノール」っていうのがあって、こっちはCH4Oという化学式。似てるでしょ?CH2という塊が一つ少ないのね。塊が一個少ないとメタノールで、これは有毒物質なのよ。飲んだらダメなやつ。逆にCH2の塊が一個増えると「プロパノール」(C3H8O)になって、こっちは毒性はないんだけど常温で発火するくらいの固形物だから飲みようがないし、臭いんだよね。化学に詳しい人が見たらもっとちゃんと説明出来るんだろうけど、ざっくり言うとこんな感じ。それにしても、凄いよね。ほんのちょっとの差で、飲めるお酒になるかどうかが決まるって。

実はこの話、高校の化学の先生が授業で教えてくれたんだけど、未成年にお酒の話するのってどうなんだ?(笑)でも、毒性ギリギリなんだよってことは、よくわかったよ。

とにかく、お酒は奇跡的に成立しているってことね。

前にも書いたことがあるけれど、料理の歴史を考える上で「お酒」は切り離せないくらい深い関係にある。お酒を楽しむための「アテ」として進化したものも多いしね。

「魚」という漢字を「さかな」って読むよね。いま、そう読んだ人が大半で「うお」と読んだ人は少数だと思うんだけど、実は和語での元々の名前は「うお」だったって聞いたことないですか?これがいつの間にか「さかな」と読むようになったのは、酒にとてもよくあう食べ物だったからなんだって。「さか」は「さけ」の変形だというのは、なんとなくわかるよね。「な」は葉っぱのことではなくて、料理全般を表していて、現代の感覚だと「おかず」に近いイメージかな。「さけ」の「おかず」という意味で「さかな」だから、「酒菜」という感覚で「魚」のことを指していたんだね。和語には文字が無かった時代の話だから、漢字を当てるのは正確ではないけれど、イメージしやすいでしょ。肴という文字が別で存在していて、おなじく「さかな」と読むのは「魚」と「さけのおかず」を区別するためだったんだのかもしれないね。

今日も読んでくれてありがとうございます。せっかく「お酒」の話を始めたから、お酒について少し勉強してみようと思います。ということで、次回もお酒の話です。

あ、余談だけど。和語では器の形をしたもの全般を「へ」と呼んでいたらしいんだ。でね、「な」を作る「へ」だから「なべ」になったんだそうな。

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武藤太郎

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