エッセイみたいなもの

今日のエッセイ ボルドー5大シャトー誕生 2021年7月7日

もう2週間以上お酒のことばっかり書いています。もう飽きちゃったかなあ。でも、せっかくだからもうちょっと切りの良いところまでは続けますよ。

さて前回までをまとめると。
フランスの第1回パリ万国博覧会で、ナポレオン3世がワインの格付けという革新的な取り組みをした。地元の仲買人組合が、ボルドー地域のシャトーを5段階評価で格付けを行った。そこにはイギリスへの輸出を見越して価格を上昇させる思惑もあり、フランスワインを一大ブランドにする試みだった。現代のビジネスに置き換えて考えても、非常にレベルの高いマーケティング&ブランディング戦略だった。
という流れだったね。

さて、その続き。
そもそも、なんで仲買人組合が格付けを行ったのか。これはとてもシンプルで、元々リストを作ってたんだよ。だって、シャトーから買い入れて販売をするのが仕事だもん。だから、販売価格を元にしたリストが手元にあって、ある程度安定的に高値で推移するシャトーは評価が高いよね、ということになった。これがどういうことかというと、その年のワインの出来だけで判断しているわけじゃないってことだね。
あくまでも「シャトー」つまり「会社」の格付けだからさ。1回きりの品評会だけでは等級を決めることが出来るわけないじゃんね。株式市場と一緒。優良な会社は長期間高値で推移するよね。評価の時間軸は長くなる。

約60のシャトーの中から、栄えある1級に選ばれたのは次の4つだ。「シャトー・ラフィット・ロートシルト」「シャトー・マルゴー」「シャトー・ラトゥール」「シャトー・オー・ブリオン」聞いたことがある人も多いんじゃないかな。今でも最高の格付けに位置していて、1973年に「シャトー・ムートン・ロートシルト」が加わってボルドー5大シャトーと言われている。
興味深いのがロートシルトだ。5大シャトーに2つ名前が入っているよね。英語読みをすると「ロスチャイルド」。あの世界最大の大富豪一族と言われたロスチャイルド家のことだ。金融業や水道や鉄道などで財産を築いた世界3大財閥の一角だ。ちなみに、あとの2つはロックフェラー家とモルガン家ね。この超大金持ちがシャトーを所有していることだけでも、ワインが経済と深く結びついているということがよく分かるね。
この財閥の財力、知らない人のために書いておくと「引くくらい金持ち」だ。アマゾン創業者のジェフ・ベゾスが世界一の金持ちということになっているけど、財閥家は資産が公開されていないから不明なんだよね。ジェフ・ベゾスの軽く2倍はあるらしいよ。

話をワインに戻そう。この「ワインの格付け」によって、ワインの世界観が定まったと言われている。カエサルが広めてキリスト教がブランド背景をつけて、そしてフランスの経済政策によって、ついにワインが「食品」としてとんでもない地位を築くことになったわけだ。
このブドウから作られた古代からあるお酒が、世界史の一部を動かしていると思うとフワフワと不思議な心持ちになる。

今日も読んでくれてありがとうございます。まだボルドーワインの話しかしてないから、ブルゴーニュとかシャンパーニュ地方のことを紹介しようかな。その後はフランス以外の国々がワインの世界で覇権争いを繰り広げることになる。ということで、今回はその覇権争いの基礎知識でもあるよ。覚えておいて欲しいのは「ブランド化」「シャトーを格付け」「経済が大きく関わった」の3つのポイントかな。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

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