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今日のエッセイ 日本の食卓をハックした味噌汁 2021年8月11日

日本人の食卓をハックした味噌汁です。室町時代(1392~1568年)になると、日本人はみんな味噌汁の虜になってるの。美味しもんね。いや、美味しい以外にもいろんな理由が絡んでいるんだけど。そのひとつが栄養、とにかく栄養価が高かったの。味噌汁って別名「医者殺し」とも呼ばれて、これで健康になっちゃうから医者が潰れるという意味だ。この栄養価に目をつけた守護や地頭といった、後の戦国大名になっていく人たちはとても味噌を大事にしたよね。味噌の開発に力を入れた人もいるくらい。

とにかく室町時代から人気が爆上げ。味噌汁もだけど、味噌そのものがだね。農家だったら、だいたいどの家でも自家製味噌を作るようになった。ちなみにこの文化は、つい最近まで続いている。知らない人も増えたみたいだけど、少し前までは「ぬか床」と「味噌」は各家庭で作っていたからね。だから、「味噌汁はおふくろの味」と呼ばれる「家族だけの味」だったんだ。
自宅で味噌を作っているし、すり鉢も家にあるんだからさ。作るよね、味噌汁。味噌汁って、カンタンな上に「大量に作ることが出来る」からね。朝のうちに作っておいて、夜まで食べるのに最適なんだよ。めっちゃ便利じゃん。

さらに、味噌は健康に良いということは今でも言われているけど、この頃にはその認識があったみたい。そもそも、それまでは「ご飯」だけの食事が中心だったわけ。ご飯は穀類最強の高性能食品ではあるのだけど、どうしてもお米ではカバーできない栄養素がある。タンパク質とかリシンとか、そういうのはご飯では摂取できない。これが味噌には含まれているから、ご飯と味噌汁は栄養学的にも最強のパートナーってことになるね。足りないところを補うって素敵な関係が生まれた。
お米の栄養素とかルーツの話は別の機会に書くことにする。世界史レベルで人類に大きなインパクトを与えたお米は、これだけでかなりのボリュームになると思うからさ。

ということで、今回はざっくりといきます。近代以前は「食事のほとんどがご飯(米)」だったということを前提として覚えておいてね。そして、現代風に言えば「お米はスーパーフード」だということも。お米と言っても、玄米や胚芽米くらいの精米だったんだけど、ホントに栄養価が高いんだよ。生命維持に欠かせない炭水化物がメインなのは皆知っているよね。。それ以外に食物繊維、タンパク質、カリウムやマグネシウムやリンなどのミネラルもバランスが良いし、ビタミンだって葉酸やB1、B2を含めて優れている。
ただ、やっぱり足りない部分もあって、代表的なのはタンパク質と脂質。お米にもタンパク質はあるけど量が足りないんだ。タンパク質は体を作っている。つまり肉体の材料だ。これが足りないと体が成長しない。脂質は糖質である炭水化物よりもエネルギー量が多い大切な栄養素なんだよ。太るのを気にして脂を避ける人もいるけれど、少なすぎると体力がかなり落ちる。疲れやすくなったり、体の抵抗力が落ちたりして、風を引きやすくなることもある。さらに、ビタミンA、D、E、Kを吸収しにくくなってビタミン不足にもなりかねない。というのも、このビタミンは脂溶性ビタミンと言って「油に溶けて吸収しやすくなる」性質のものだからなんだ。

味噌のパワーって凄いでしょ。畑のお肉って聞いたことない?もうほとんど肉と同じくらいの栄養素を兼ね備えている。脂質に限って言えば、植物性だから血液中の中性脂肪やコレステロールを下げる働きもあるんだよ。まあ、ホントは動物性脂質も食べたほうが良いんだけど、とりあえず「健康的に生きていくために必要なもの」はご飯と味噌だけあれば整うからね。
だけど、味噌を食べるのってなかなか厳しいよね。味噌をご飯に乗せて食べたら美味しいけど、たぶんめっちゃ喉が乾く気がする。なかなか毎日は続けられないんじゃないかな。

ここで登場するのが、味噌を汁物にした味噌汁だ。これがホントに凄い発明だったんだよね。だって、汁物なら食べやすいでしょ。しかも、具を入れるから他の野菜や魚や貝を一緒に食べられる。味噌のままだったら、他の食材を別に調理しなくちゃいけないんだけど、味噌汁なら全部入れちゃっても良いんだから。
これはもう最強の料理でしょ。
余談だけど、最強の料理と表現した意図を説明しておくと。料理っていうのは、究極的には「徹底的な効率化」が原点なのね。人体に必要な栄養素を取るというのは、つまり生命維持活動。これを効率よくするための工夫ってこと。食べやすくする、続けやすくする、美味しくして食欲を増進する、というのは全て「効率化」の中に含まれる。という本質的な意味で「最強」ね。

今日も読んでくれてありがとうございます。このあと戦国時代に突入するんだけど、意外なところで味噌汁が活躍するんだよね。日本で一番最初のインスタント味噌汁が発明されたのもこのときだ。戦国と味噌と味噌汁の面白い関係の話はまた次回。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

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