エッセイみたいなもの

今日のエッセイ そもそも味噌の種類って 2021年8月15日

味噌汁に絶対欠かせないもの、それは間違いなく「味噌」です。味噌がなくちゃ味噌汁にならない。当たり前過ぎてちゃんと語ることが少ないのだけど、実はこの味噌のバリエーションがまた豊富なんだよね。みんな子供の頃は特にだけど、自分ちの味噌汁が普通だと思っているから。いろんな料理屋でいろんな味噌が登場するから、赤だしとか白味噌とか言っているけど、ホントにいろんな味噌があるんだよってこと知らないでしょ。というか、ぼくもちゃんと整理したことない。ということで味噌のバリエーション編いってみよう。

味噌の作り方を、超大雑把に説明しましょう。
原料は大豆がメインだね。大豆を加熱して柔らかくしたものを叩いて潰して、そこに塩と麹を混ぜる。混ぜた材料を空気に触れないように保存して熟成させると味噌の出来上がり。なんともシンプルに見えるんだけど、いろんな技術や知恵が詰まっているおかげで現代の美味しい味噌が食べられるんだ。あんまり細かいところまで説明しても本筋とは関係ないから、種類のポイントだけピックアップしよう。

味噌の種類が大きく分類されるのが麹菌によるものだ。麹菌というのは米や麦などに生えるカビの一種ね。食材にカビを発生させて、このカビのちからで発酵食品を作るというのが基本だ。麹の土台となる食品によって大分類される。味噌の場合は「米麹・麦麹・豆麹」の3種類がある。一番多いのは米麹だ。ご当地味噌の殆どが米麹で作られている。麦麹で作られる味噌は九州が多いかな。豆麹は少なくて中京地方が主。徳川家康が好んだ八丁味噌も豆麹で作られている。この分類を米味噌、麦味噌、豆味噌と呼んでいるから覚えておくと良いかもね。

地域によって色が違うと言われているよね。だけど、別に地域ごとに色の特性があるわけじゃないんだ。どちらかというと熟成時間によって色が変化する。タネの中のアミノ酸と糖が反応して色がどんどん赤黒くなっていくんだよね。メイラード反応と言って、パンの耳とか肉の焦げ目とかと同じ原理だ。熟成の具合で風味が変わるから、それを調整しているということだ。ちなみに、熟成期間は江戸時代までは1年~3年程度。明治以降は速醸法(そくじょうほう)が編み出されて、数ヶ月にまで短縮された。自宅でもどんどん熟成が進んじゃうと困るから、現代の味噌は基本的に酒精を添加して麹の活動を止めるような加工がされてるよ。じゃないと、パックが破裂するからね。生味噌というのも売っているけど、そっちは加工されていないもの。だからどんどん熟成が進んでいく。
味の違いは熟成時間の他にもあって、麹と塩のバランスだ。塩を増やせば塩辛くなるし、麹を増やすと甘くなる。例えば、西京味噌は甘みが強くて色が白い、ということは麹が多めで熟成も短いということになるね。白味噌の話のついでに細かいところも紹介すると、大豆の加熱方法も違いがあるんだ。大まかには「煮る」か「蒸す」かだね。煮ると水に溶け出しやすい成分が出ていってしまうから、さっぱりとした味になるし、メイラード反応が起こりにくくなるから白っぽい味噌になる。ということで、出ていくのは主に糖質ね。メイラード反応の素になっている糖質。あと、全体的に水分が多めになるわけだから、しっとりとした感じに仕上がるかな。蒸すと味が全部残るからコクのある風味が強い味噌になる。

という大まかな製法の差があるところに、麹菌の差が出る。基本的な麹菌は先に書いた3種類ではあるんだけど、生産地域の気候や醸造所の特有菌があるから、味噌蔵の数だけ種類があるのよ。その数は千を超えると言われている。しかも、その千以上の蔵で数種類の味噌を作っているから、ホントに途方も無い種類の味噌が世の中に出回っているんだよね。

昔は各家庭で味噌を作っていることも当たり前だったから、家庭の数だけ味噌の種類があったということだ。田舎は江戸時代でも自家製味噌だよ。ここから生まれた言葉が「手前味噌」。「なんだかんだと我が家の味噌が一番うまいんじゃ」という意味で、それが「自分のところを自慢する」という形容に使われるようになったんだ。今では自宅で味噌を作っている家はごく少数だろうけどね。

もう一つ余談。近代化してからは味噌作りもステンレスの桶にすっかり様変わりしたんだけど、当然それまでは「木桶」を使っていた。実は味噌蔵の木桶は常に中古品。新品の木桶を使うのは「酒蔵」だけ。酒を作る木桶はだいたい30年くらいで使用できなくなるから、それをばらして組み替えたものを使うのは「醤油蔵」だ。そこで30年くらい使っていると醤油を作るには耐えられなくなってくる。そしたら、またバラして組み直したものを「味噌蔵」で使うんだよ。だから、木桶って100年~150年くらい使うのが普通だったんだって。ほとんどいなくなっちゃったけど、それでも全体の1~2%は木桶醸造してるって。
木桶だと、木そのものに麹が住み着いちゃうんだ。だから、何年も使っているうちに蔵独自の生態系を築くことも多くて、今よりももっといろんな味があったんだろうね。なんか、うちの土鍋みたいだ。長年使い続ける土鍋は、うま味を吸い込んでいて水を焚くだけでも味が滲み出るって言うもんね。木桶の面白いのは、酒蔵、醤油蔵、味噌蔵と地域をぐるっと廻るから、地域特性も出やすいんだよね。

味噌汁とは話がずれちゃったけど、なんか良いなあと思ってさ。SDG’s(サスティナブルデベロップメントゴールズ)日本語だと「持続可能な開発目標」。これなんか、木桶文化を復活させるのもありなんじゃないかな。100年使えるならステンレスよりもゴミが少ないもんね。
醸造の手間も管理もかかるし、長く使うのはとても大変なんだろうけどね。なんとかならないもんかなあ。

今日も読んでくれてありがとうございます。味噌の概要はこのくらいにしましょうか。最後は違う話になっちゃったけど。味噌汁のために味噌の話をだいぶやったけど、それでも残りの味噌の話だけで5本くらいかけるんじゃないかな。じゃ、味噌汁での味噌の扱いと特徴を次回で紹介します。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

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