エッセイみたいなもの

今日のエッセイ すっぽんの旬のはなし。 2021年9月9日

すっぽんの旬っていつだと思いますか?日常的に食べるものでもないし、ましてやスーパーで気軽に買えるよなものでもないので、あまり旬のイメージがないかもしれない。基本的には冬のイメージかなあ。

天然のすっぽんの場合、9月から11月上旬くらいまで。あくまで天然ならの話ね。すっぽんって亀じゃん。だから、寒くなると冬眠する。冬眠する直前は、冬眠期間中に食事をしなくても良いように栄養を体に溜め込む。だから、この時期が一番味がのっていて美味しいということになる。
逆に、鍋が恋しくなる真冬は食べられない。そりゃ冬眠してますから。仮に冬眠中のすっぽんを確保したところで、断食中なので栄養は少なくなっている。ということで、天然すっぽんの旬は秋だ。
しつこいけど、天然すっぽんの場合の話。

じゃあ、養殖すっぽんの旬はいつだろう。旬は一年中かな。多少のずれ込みはあるかもしれないけれど。養殖業者の方たちだって色々工夫をしていて、一年中安定して美味しく食べられるように調整してくれているから。水温を下げなければ冬眠しない。
味を左右するのは、養殖業者さんの腕次第ということだ。水温や水質の管理、生育環境、エサなどなど。その点ではうちはとても恵まれている。すっぽん養殖で有名な浜名湖が近くにあるからだ。江戸から明治にかけて、すっぽん養殖に適した環境を探して全国を歩いた偉人がいて、その人の眼鏡にかなったのが浜名湖。水質もよく、気温も申し分ない。浜名湖は元々魚にとっては天国のような環境なのだそうだ。

この環境下で、すっぽんを育てているのは、すっぽんことを研究し続けてきた人たち。海外などであるような、早く大きくするという気持ちは微塵も持ち合わせていない。ゆっくりと時間をかけても良いから、上質なすっぽんを育てることに集中している。おかげで、数年に一度くらいだけれど、注文しても売ってくれないこともある。まだ育っていないからってね。そんなときは、潔く諦めるしか無い。それで良いと思っている。

ともかく養殖すっぽんのおかげで、ぼくらはいつでも上質なすっぽんを食べることが出来るのだからありがたい。夏場などは、うなぎではなくすっぽんで精をつけるというお客様もいらっしゃる。有りだよね。今の所秋の様相が深まっているけれど、また暑くなるみたいだから残暑対策にすっぽんというのも良い。

時折、天然すっぽんを買ってほしいという電話がかかってくる。だけど、これに関してはいつもお断りしている。味や匂いに関しては、泥抜きなどの技術である程度どうにかなる。だけど、生育環境の確認が出来ないのが問題なんだよね。すっぽんって、かなり生命力が強くて大概の環境でも生きていける。
大概の環境でも生きていけるというのは、たとえ汚染されていてもということだ。まあ、現代の日本においては人間の命に関わるほど汚染された河川というのは考えにくいのだけど、それでもちょっと慎重にはなっちゃうかな。とくに内蔵はね。すっぽんのレバーを楽しみにいらっしゃるお客様も多いので、確認の取れないものは慎重になる。あと、捕獲した後の環境もわからないしね。申し訳ないけれど、お代をいただいて商売をしている以上は、安心安全は美味しいよりも優先したいんだよ。

全然違う話になってしまった。ともあれ、すっぽんって美味しいよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。養殖であれ天然であれ、旬の時期がどうあれ。美味しく感じられる時期というのはある。その食材の栄養が、人間にとって良いタイミングで提供される。それは、味覚に直結するから。そういう意味では、これからの時期は間違いなくすっぽんが美味しい時期だろうね。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

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