昨日のエッセイを読み返してみて、ふいに昔の上司が言っていた言葉を思い出した。
「味わい深いね~」
この人は、なんでも味わい深いと感じるらしい。取引先との商談で想定外の回答が返ってきたからと、上司に相談にいくと、味わい深いと言い。部門の売上推移が想定外の状況になったりしても、やっぱり味わい深いと言うのだ。
常にスルメかなにかを口に入れているのじゃないだろうか。そうでなかったら、世の中の色んなものがイカに見えているに違いない。
ぼくもイカに見られていたかもしれないけれど、残念ながらそんなに体は柔らかくない。
味わい深い。
まあ、なんでも良いのだろうね。とにかく、面倒なことやシンドイことがあった時、上司から叱責されそうな状況になった時、全部味わい深いと言ってしまう。
ある種のおまじないみたいなもんだ。
このおまじないを言っちゃうと、急に楽になるから不思議だ。
競合他社が勝負を仕掛けてきたときなんかは、ちょっと頭に血が上っちゃっていたこともある。そこに例の言葉を付け加えると、急に楽になる。
正確に言えば、客観視するようなるのだ。
一旦客観視して、この味わい深い状況をどうやって楽しんでいくかを、まるで他人事のように考えてみる。なんだか、映画のシナリオでも考えてみるかのような気楽さで。映画のシナリオが気楽というわけじゃない。他人事の感覚でストーリーを勝手に作るということである。
他人事だから、実際に行動するのは大変そうなことも含まれるし、突飛なアイデアも盛り込まれていく。
盛り込まれたところを、程よい加減でツッコミを入れていく。
つまり、出っ張りすぎた部分をちょっとだけ変形させる。削ったり変形させたりして、現実という枠に納めるためにね。
枠に収まらない状態で実行に移すことも多かったけど。
意外と、自分や自分が所属する集団を客観視するのは難しいのだ。だから、数字を並べて情報解析をしたり、定性情報をピックアップしたりもする。時々は、棚卸しをしてポートフォリオを作り直したりする。
状況分析は、ロジカルにとても役に立つ。
だけれど、心を客観的に持っていくのはなかなか難しい。数字だけだと、特にね。
だからこそ、魔法の言葉の登場なんだよね。味わい深いね。とさ。
言葉はなんでも良い。ワクワクさせてくれるじゃん。面白くなってきた。楽しくなってきた。
名探偵コナンの主人公工藤新一(高校生バージョン)が、サッカーの試合に負けそうになった時に「やべーな。ここから逆転したら俺たちヒーローになっちまう」と言ったシーンを思い出した。
今日も読んでくれてありがとうございます。ゲームの中にいると思えば、いろいろあったほうが面白いのよ。刺激を求めて危険なことをする人もいるけれど、色々ある実生活も見ようによっては刺激にあふれているもんじゃない。