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今日のエッセイ 「たべものラジオ」こぼれ話。味覚が不思議に思えてきた。 2022年1月16日

2022年1月16日

「たべものラジオ」のこぼれ話です。
ちょっと前にビールのシリーズが公開された。マジでびっくりするくらい情報量が多くてさ。とてもじゃないけれど、全部を語ることは出来ないなと。

で、そろそろ次のシリーズが始まるのだけれど、今回はスシの話をする。
なんでスシにしたかと言うと、「ビールほどの情報量はないだろうな」という目算があるから。だったんだけど、これが改めて調べてみると、知らなかった情報がどんどん出てくる。
とは言っても、全部話してたら異常な長さになっちゃうし、詳細に話してもしょうがないということもあるから、適宜カットしていくけどね。

ところで、ここまで「たべものラジオ」をやってきて、人間の味覚ってどうなっているんだろうと改めて感じる。メチャクチャ不思議。

直感的には「甘い」は、基本的に美味しいと感じやすそうだなということはわかる。糖質は、それがそのまま人間にとってのエネルギーになるから。生存本能として、甘さを美味しいと感じるようにインプットされているようにも感じる。

ところが、苦味というのは「これは毒かもしれない」というアラートだったはずなんだよ。人間以外の動物の殆どは苦いものを口にしないことが多いしさ。
それから、酸味。「これは傷んでいるかもしれない」というアラートだったはずなんだ。ペットが酢飯を食べないように、酸味は嫌われて当然だし、酸っぱいものが苦手という人もそこそこいる。なのだけれど、酸っぱい味を作りたくて進化した料理は世界中にたくさんあるんだよ。スシなんか典型だよね。酸味がないスシはもはやスシじゃないんじゃないかってくらい。

味覚については、閾値が提示されている。その味をギリギリ感知できる最低の濃度のことだね。
甘さに関しては割と鈍くて0.1~0.4%程度だと言われている。塩味も同等くらいで0.25%。酸味は0.0019%で苦味は0.0004%。
酸味と苦味は超敏感だ。危険信号だから感知しやすいのだろうね。

これを美味しいと感じるのだから不思議だ。
先程スシを例に挙げたけれど、世界中で飲まれているワインだって酸味がある。むしろ甘すぎると敬遠されやすい。そもそも酢を作ることに情熱を燃やしてきた歴史もある。果物だって甘酸っぱいイチゴやリンゴ、パイナップルに桃にキウイフルーツと、枚挙にいとまがない。

そういえば、人類の祖先である類人猿が地上に降り立つ頃。それより以前は樹上生活で手に入る果物を食べていたんだっけ。そういうところにルーツがあるのかもなあ。

そうは言っても、苦味も酸味もある程度の訓練が必要な味覚である。幼い子供が敬遠するのは当然のことなのだ。何度も繰り返して食べていくうちに、苦味や酸味を含む食品の中に美味しいと感じられるものがあることを知る。経験的に認知していく。
特に、苦味は顕著だよね。あんなにも苦いものを嫌がったはずの子どもが、ある瞬間から美味しそうにビールをゴクゴクと飲むようになり。ネギやピーマン、春菊を美味しいと感じるようになる。
いやもう。
不思議すぎるじゃない。

今日も読んでくれてありがとうございます。こんなことを不思議だと感じ始めちゃうと、きりがないよね。我々の味蕾と脳の認知力って、一体どうなっているんだろう。勉強してみようとは思っているんだけど、もしかしたら脳科学や生理学の世界になっちゃうのかな。こまった。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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