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今日のエッセイ 「働き方」とか「ジョブ型」とか「多能工」 2021年5月7日

2021年5月7日

「これからの働き方を見直そう」という流れが来てますね。働き方改革なんて言葉もずいぶんと定着しました。ジョブ型雇用だとかメンバーシップ型雇用だとかも、言葉としては市民権を得ましたよね。

一度、ジョブ型とメンバーシップ型の違いを整理しておきましょうか。
【ジョブ型】
仕事という「枠」があって、それに見合った人材を雇用。欧米諸国の主流。
担当する職務の専門能力などのレベルに合わせて報酬が決まる。年齢ではなくスキル重視。
【メンバーシップ型】
会社と相性の良さそうな「人」を雇用。仕事は入社後に割り当てる。職務の移動もある。日本の主流。
個人の総合力で報酬が決まる。勤続年数なども考慮されることが多い。

働き方を見直すなかに「ジョブ型の方が効率が良くていいよね」という論調を見かけるけど、どうなんだろうね。ぼくはケースバイケースだと思うけど。
ぼくらの業界は基本的に「ジョブ型」です。日本料理の職人だからね。技術職なの。だから一般採用しておいて、料理人になったり経理に移動になったりしないよね。だから、「ジョブ型が良いよね」って言われても、「はぁ、そうですかね」という具合だ。つまり、普通じゃんとしか思わないのね。

そんなことよりも、もうちょっと違う「働き方」を「ポジショニング」で考えたいと思っている。

例えばね。Aさんのメインスキルは調理だとして、調理レベルを10とします。ホール配膳レベルが5、営業レベルが1、庭の手入れ8。普通は、調理スタッフは調理のことだけなんだけど、他のことも満点じゃなくてもいいから出来るという状態にしておいたほうが良いかな。というのは、個人のスキルも必要だけど、組織のポジショニングの考え方の問題だと思うんだ。

そもそも「調理以外の仕事をする」という概念がない。というのが一般的なんだよね。これを「ある」にする。「ある」に切り替えるだけで、Aさんはすでにレベル5の接客能力を持っていれば、すぐに「ホールスタッフの補助」が出来るでしょ。
「そんなのやりたくない」と言うかもしれないけど、料理人はもっとたくさんお客様と直接話したほうが良いよ。その方が、圧倒的に早く料理のスキルが伸びるもの。組織はその部分の働きを正しく評価すればいいし。

ぼくのイメージはサッカーチームなんだよなあ。ポジションは守備なんだけど、必要に応じて攻撃にも参加していくとか、その逆もあるでしょ。だけど、長友は大迫にはなれない。ってサッカー好きな人にしか伝わらない例えだね。

仕事をしていると、手が空く時間がそれぞれにずれることがあるよね。その空いた時間は他の誰かの補助をすればいいじゃない。そうすれば、助かるというだけじゃなくて、お互いの仕事のことも理解できる。理解した上でお互いに修正し合える。だよね。
逆に混み合う時間もある程度わかる。例えば、ホールが一時的に逼迫するタイミングもわかる。だから、料理を仕上げる段取りをそれに合わせておけば、いつでもヘルプに行けるでしょ。というふうにぼくの仕事は組み立ててあるんだ。

「雇用はジョブ型だけど、流動的に補助ができるように動ける」というのがぼくの理想。だけど、こういう働き方を面白いと思う人ってどのくらいいるのかな。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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