エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 「UMAMI」になった日本の「うま味」のパワー 2021年5月26日

2021年5月26日

「旨味」は今や世界語で「UMAMI」になりましたね。第六の味覚として世界でも認識されるようになったんだって。日本人であるぼくらが知らないうちに、日本語がそのまま海外で使われるようになっている。そういうことは結構あるみたいね。

それまでは五味といって「塩味」「甘味」「酸味」「苦味」「辛味」の5つを味の基本としていた。というか今もそこは変わらないんだけどさ。これに「うま味」が加わることで味が加速する感覚とでも言おうか。鬼に金棒の金棒になるんだよね。

例えば、すまし汁。お吸い物と言われたりするもの。塩味を中心に甘味や香りで味を整える料理なんだけど、「うま味がしっかりしてると塩分が少なくてもしっかりと味を感じ取りやすい」という効果がある。もちろんうま味そのものを味わうことも重要。そこに加えて塩分控えめなのに、ちゃんと塩味も感じられるという効果をもたらしてくれる。ここが「うま味」のスゴイパワーでもあるよね。

ここ何年かは、日本料理業界の努力の積み重ねもあって、海外でも日本食が浸透してきている。それは美味しいと言うだけじゃなくて、健康的だということも大きく影響しているらしいよね。じゃあ、なんで日本料理が健康的と言われているのかというと「薄味だけどちゃんと美味しい」だと思う。

ここで言う「薄味」は五味の濃さの話ね。人間の味覚っておもしろくて、うま味とか香りがしっかりしていると五味をはっきりと感じやすい。特に塩味は顕著だ。それは古今東西を問わず、なんだけど。西洋料理の場合はうま味を強くしようとすると、脂質が強くなりやすい傾向にあるということがあってね。せっかく減塩しても、今度は脂の取りすぎを気にしなくちゃいけない。そこを工夫するのに香りを使うから、日本料理よりもスパイスが豊富になったということもあるらしいよ。

日本食が健康的と言われているのには、UMAMIという黒幕がいるからなんだよね。

歴史的に「肉を食べない」という制約があったからこそ、野菜中心生活だったからこそ、うま味の文化が発達したというあたりが面白いよね。大抵の歴史はそうなんだろうけど。制約があったり、発達が遅れたからこそ工夫を重ねていって、それが強みに変わっていく。とても再現性の高い事象のひとつといえるね。

一般的に「出汁(だし)」と呼んでいるものは、西洋料理のスープとは違う。スープに該当するのは「汁物」だ。出汁を定義すると「食材のうま味を水に溶け出させたもの」になるのかな。だいたいそんな感じ。出汁ってね、単体だとわかりにくいんだよ。うっすいなあ。くらいに感じる。ホントにサポート役のポジションなんだろうね。
ちなみに、顆粒だし(だしの素)は、水に溶かすだけで美味しく感じるよ。だって、塩味ついてるもん。パッケージをよく見てみて欲しい。塩分の表記があるから。だから、顆粒だしを使うときはレシピの分量よりも塩味を控えめにすると良いよ。

コロナ禍で運動不足になったりして、健康意識がとても高まっているよね。運動することも大切。だけど、食べることも大切。ぼくらの体を作っている「素」だからね。塩分過多、糖質過多、脂質過多が気になる人は、うま味と香りを意識的に活用してみて欲しい。それだけで「薄くて味がしない」っていうことが減るから。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

-エッセイみたいなもの
-, , ,