ダイエットや健康維持の為に、糖質制限を中心に行う人も増えています。確かに現代人は糖質の摂取が多くなっているのだけど、「糖質=炭水化物」と考えて炭水化物を摂らないのはちょっと違う気がするんだよね。
レジスタントスターチという物質がある。難消化性でんぷんとも言うんだけど、単純に消化しにくいデンプンなのね。消化が悪いことはあんまり良くないように思えるけれど、実はこれがかなりのスグレモノなんだ。
ざっくりと言うと、腸内環境改善にとてもポジティブな作用をもたらしてくれる。
ということを、これから書き出す「炭水化物を食べよう」の話の前に知っておいてもらうと良いかな。
レジスタントスターチの良いところを理解するには、食物繊維のことを理解するのが早道だと思う。食物繊維はわかるよね。今、野菜を思い浮かべたかな。そのとおり、野菜に多く含まれる繊維も食物繊維なんだけど、これは大きく2つの種類がある。
一つは、不溶性食物繊維。たぶん多くの人が想像する食物繊維はこっちだろう。例えばキャベツとか、ほうれん草とかに含まれる食物繊維だね。主に腸内のお掃除係。特に大腸の掃除が得意で、有害物質というか、いわゆるゴミを回収して排泄させてくれる。水に溶けない食物繊維だから、いろんなものを絡め取って外に出すんだね。
もう一つが、水溶性食物繊維。海藻類が多いかな。あとゴボウとか。こっちは栄養になる。人間のためと言うよりも、腸内にいる善玉菌の栄養になるのね。腸内には善玉菌と悪玉菌と日和見菌の3種類がいるんだけど、善玉菌が優勢の状況が良い環境ということになるから、善玉菌に頑張ってもらうために必要なものなんだ。
レジスタントスターチが凄いのは、この両方の性質を持っていることだ。
しかも、更に特殊能力を持っている。それは「直腸でも活躍する」能力なのね。直腸って、大腸と肛門をつないでいる部分なんだけど、食物繊維はここをスルーしちゃうんだって。だけど、この直腸が病気になりやすい腸だったりもするのよ。だって、食物繊維が掃除をしてくれないし、ゴミが溜まりやすい。ちなみに、癌になりやすいのも大腸じゃなくて直腸ね。
じゃあ、レジスタントスターチを摂取するには何を食べればいいの?ってことになるね。答えはとてもシンプルで、「ご飯」だ。炭水化物だけど、お米のご飯ね。そのご飯の冷めたものに含まれる成分なんだ。実は、冷や飯はめちゃくちゃ体にいい。
さあ、ここで炭水化物が敵じゃないということを理解してもらえたかな。さらに付け加えると、難消化性なのであまり体に蓄えられない性質を持っている。つまり「太りにくい」につながるね。でんぷんを消化しなければ糖質にならないもん。ついでにもう一つ。お米には少ないながら不溶性食物繊維も含まれている。10%弱くらいのものだけどさ。意外にもこれが効くんだよ。毎食続けて食べるとしたら、キャベツとご飯と比べてどっちが良い?ご飯じゃない?食べる総量が多いから、結局食物繊維の摂取量が多くなるってわけ。
興味深いのデータが有って、戦後すぐの頃の日本人の食物繊維摂取量が1日あたり27gくらいで、最近だと15gに満たないくらい。で、推奨されている摂取量が20g程度。だいぶ減ったよね。
これと同じように減っているのが、米の消費量なんだよ。日本人がご飯を食べなくなったせいで食物繊維が足りなくなった可能性が高いと言われている。特に、戦後すぐの頃はお昼に冷や飯を食べていた可能性が高い。今みたいに炊飯器も普及していないし、当然保温機能もない。さらに、外食産業も今ほど多くはないからお弁当の場合も多かった。だから、必然的に冷や飯をそのまま食べていたはずだ。ついでに言えば、精米の技術も現代ほどではないから、胚芽米のように食物繊維自体も多かったと想像できるね。
つまり、「お米の消費が多い上に、冷や飯を食べる機会がたくさんあった。」ってことだ。
あまり知られていないし、糖質制限と聞くと「お米抜き」と直結して考えてしまいがちだけど、「ご飯を食べる」ことは、日本人の健康にとてもポジティブだと言える。
闇雲に「和食サイコー!」とは言わないけれど、きちんと事実を積み上げて考察し、検証していった結果得られた人類の知であることは揺るぎない事実だ。過去の食生活と現代のそれを正確に比較して、原因を分析して、しっかりと治験データをとって検証する。気の遠くなるような作業を積み上げてくれた先人たちがいるのだ。その知見を見ずに、体験の積み重ねだけで「糖質=悪=米」と直線で結ぶような論調の書籍が出回っているのはもったいないんじゃないかな。
今日も読んでくれてありがとうございます。冷や飯よりも温かいほうが美味しいかもしれないけれど、時々は冷や飯を食べるのも良いかもね。ぼくはわりと冷や飯も好きだよ。そうそう、お寿司やおにぎりって野菜なしになりがちだよね。それでも健康的なのはこういう理由があるからなんだろう。