今年のお茶は例年に比べてかなり早いですよ。ざっと10日は早いんじゃないかな。正確なところはわからないけれど、うちの茶畑を見るとそんな感じです。
そうなんですよ。実は「掛茶料理むとうの茶園」があるんです。かなり小さいけどね。料理屋が使う食材としてのお茶だったらこれで充分なのだ。お茶の葉っぱを飲むために加工するとなると、生茶葉はかなり小さくなるんです。だから、100gのお茶に加工するには生茶葉を1kgくらいは収穫しなくちゃいけない。となると、ビジネスベースとして考えると、かなりの広さの茶畑が必要になりますよね。ホントお茶農家さんってスゴイや。
ぼくらは、生茶葉を生茶葉として料理に使うから。100g使いたかったら100gを収穫する。もう野菜と同じ扱いなんです。だから茶園はちっちゃくても充分なのだ。
野菜として茶葉を使うとなると、他のお茶農家さんとは違うことがいくつも出てくる。茶葉の良し悪しの見方もきっと違うんだよ。
天ぷらにするには、新芽の甘い部分も欲しいけれど少し苦味のある部分も必要になる。じゃないと香りも味も際立たないからね。
和え物や塩漬けに使う時は、茎がじゃまになる。普段なら柔らかいと感じる茎の部分も、そのまま食べる時は歯ざわりの悪さに繋がるから。だから、うま味と香りのしっかりした葉の部分だけを使いたい。
ベースとにして使用する時は、渋みが少ないほうが良い。ジェノベーゼソースみたいにして和えたり、焼き魚の餡に使ったりするんだけどね。飲む時は美味しいと感じる渋みが他の食材と喧嘩することが多いから、一番茶の新芽の部分じゃないと、あまり使い物にならない。
下処理も違うよ。煎茶は蒸すけれど、ぼくらはさっと茹でる。アク抜きをする意味もあるしね。こうすることで、いろんな料理に活用することも出来るわけです。この茹でた茶葉でじっくりと飲み茶をつくったら、いわゆるホントの生茶が出来ます。ことしも少し生茶を作ろうかな。
ちなみに、普通は水滴がついた茶葉の収穫はしないんです。雨上がりとか。お茶の加工のときに茶葉に水滴がついていると蒸しムラがでて、味が悪くなるんだって。うちは気にしない。だって、すぐに下茹で処理しちゃうから、ムラなんか出来ないんだもの。
何年もお茶料理を研究しているとね。いろいろと出来てくるものもあるんですよ。その過程でじぶんの茶畑が必要になって、茶畑があるから出来る料理も生まれてくるんです。手前味噌でなんですが。そうそう真似できるものじゃないと思いますよ。ガチの料理人がガチで茶料理を開発するって。茶処で有名な静岡県内でも「お茶を使用した料理を出すお店」としては、なかなかのもんだと自負してます。
と、そんなわけで。オープン前に全員で茶摘みに行ってきます!