「人とのコミュニケーションが苦手なんです。コミュ障なんですかね。」という相談をいただいた。「うまく話すことが出来ない」のが悩みだという。先日の講演の反響かな。こんな相談が来るとは思ってもいなかったよ。
たぶん。この方はコミュ障なんかじゃない。とぼくは思う。
だってね。話が噛み合わないということに気がついているのだから。そして、話が噛み合わないなんてことは、一日の間に何度も何度も発生することなんだから。そんなに気にしなくていいと思うんだ。
そもそもの間違いは「話す能力がない」と思い込んでいることなんじゃないかな。そりゃ、人によって上手い下手はあるよ。だけど、ぼくとは十分にコミュニケーション出来ているわけだ。ちょっと聞き始めたら、色々と語ってくれる。取っ掛かりさえあれば、話せるんだ。
会話やコミュニケーションが苦手だという人は、2つのパターンのどちらかに陥っている。ぼくの勝手な解釈だけどね。ひとつは、「取っ掛かりも無い状態から話し出そうとしていて、話がうまく出来ない。これを能力の問題だと思い込んでいる」こと。もうひとつは、「話が噛み合わないことを、自身の発話能力の問題だと思い込んでいること」だね。
まず、なんのきっかけもなく話し始めるのは難しいよ。毎日顔を合わせている友達なら「ねぇ、ちょっと聞いてよ」で良いのだけれど、初対面でそんなわけにはいかないんだ。びっくりするでしょ。「はじめまして。昨日私の友達がね・・・。」なんて言われたらさ。
取っ掛かりはどこにでも転がっているから、それを見つけるところから始めること。周囲にあるもので良いの。花が咲いていたら「きれいですね。何という花かなあ」とかなんとか言って始めたら良い。
相談者は小売店をされていて、お客様とのコミュニケーションでも困っているそうだ。お会計だけして終わってしまいたくないと。だけど、うまく会話を切り出せないんだって。天気の話でも、持っているものを褒めるでも、なんでも良いと思うんだ。ホントは。
苦手だと思い込んでいるみたいだったから、ちょっとだけきっかけを作ることをアドバイスしてみた。それは、お店の目につくところに「自分の得意な分野で、お客様が見てしまう」なにかを設置すること。
うちの具体例を参考にしてもらうとわかりやすいかな。目につくところに、ふぐのポスターがある。飾りっ気もなにもなく、図鑑を拡大コピーしたようなもので、かなり大きい。そうすると、帰り際にでもじっと眺めている人がいる時がある。話しかけるときは「意外といろんな種類のふぐがいるんですよね。」だ。ワンパターン。これで充分。何かしらのコメントが返ってくるから、あとは話せるんじゃないかな。だって、「得意なこと」なんだから。
次。「話が噛み合わない」のは、コミュニケーションではデフォルトだよ。それを修正しながら話をしていって、折り合いをつけていくのが会話。極端かもしれないけれど、そのくらいの感覚で良いと思う。ちょっと違うなということに気がついたら、修正すれば良い。少なくとも、「今ズレてるな」と気がつける能力はあるんだから。だから悩むことが出来ているんでしょ。気がつくことすら出来ない人は、ズレたまま話し続けるんだから。
「いいお天気ですね」と何気なく声をかけられたとして、「そんなことより、今日のお食事はどうでしたか?」と返したらどうなるんだろう。そんな人いないと思うでしょ。いるんだよ。こういう返しはよくある。そうじゃなくてさ。
「いいお天気ですね」ときたら「ホントこれだけ良い陽気だと、食後は眠くなっちゃいそうですね。」「お腹いっぱいになりましたよ」「ありがとうございます。いかがでしたか?」
とまあ、かなり乱暴だけれど、ちょっと迂回すれば良いだけのこと。もしどうしても質問したかったら、の話だけど。
そもそも、会話なんてものは「お互いに想像もしなかったとろこに着地するから良い」んじゃない?それを楽しむだけ。相手の想像の範囲から大きくハズレないくらいの返事をしていく。奇をてらったことなんかゼロでいい。ましてやツッコミなんかまったく要らないし、オチなんて要らない。
相談者は「お前の話にはオチがない」と言われたことがあるそうだ。いらんよ。そんなもの。そんなことを指摘するくらいだったら、拾って笑いに繋げるくらいしろよ。と思ってればよいの。
と、ぼくなんかは思っちゃうけどなあ。
今日も読んでくれてありがとうございます。せっかく相談をもらったので一生懸命に応えてみました。そして、せっかくなのでここに書いてみることにしたのだ。少しでも誰かの役に立ったら良いな。