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今日のエッセイ ブリカンパチヒラマサは赤身だよ。 2021年4月30日

2021年4月30日

昨日「天然と養殖」の話を書いたら、もう少し具体的な話をしてほしいと言われました。ということで続きです。
最近、天然のヒラマサと養殖のブリを仕入れたのでそのあたりから話を進めましょうか。

ブリ、カンパチ、ヒラマサはブリ御三家と言われていて、みんなブリの仲間。だから似ているんだよね。外見も身質もね。よく勘違いされるんだけど、このブリ御三家は白身魚じゃなくて「赤身魚」に分類される。ぱっと見た感じ白いもんね。タイやヒラメみたい。だけどマグロやカツオと同じ赤身魚。
学術的に分類すれば、ヘモグロビン濃度による分類ということになる。ヘモグロビンって聞いたことある?血液が赤く見える成分ね。詳しいことは書かないけど。これが多いと赤身魚ってこと。
なんだけど。なんだけどさ。
昔の漁師さんたちがそんなこと考えて「赤身」って言っていたと思う?ブリやカンパチなんか、かなり昔から「赤身」なんだよね。それこそ木舟で漁業をしていた頃から。そんなわけ無いよね。ヘモグロビンなんて知らなかっただろうし。

実はね。天然のブリってホントに身が赤いんだよ。全部じゃないけど。特に今から夏にかけて穫れる小型のブリは身が赤いものが多い。マグロよりもちょっと薄いくらいの赤身のものだって見かける。知ってたかな。ブリは元々赤身なの。だけど、冬場の寒ブリとか脂の乗っているものは、脂のせいで白くなるのね。脂って固形だと白いでしょ?だから、白っぽくなるの。でも完全な白にはならなくて、ピンク色に近いかな。そういう感じになるのが、本来のブリ。ある意味ね。
現代は養殖ブリのほうがたくさん市場に出回っている。昨日の話にもあったけど、脂が乗っている方が美味しいわけだから、しっかり脂がついたブリだ。こういうのをスーパーや飲食店で見かけることになると、ブリやカンパチは白身魚なのかなと思ってしまうのも無理はないよね。

もう一回言おう
ブリはもともと身が赤いから赤身魚。

ところで、脂の違いの話だけどさ。毎日のように魚を切るとわかるようになる。脂の違いがね。魚をおろすときに包丁に脂分がつくんだけど。もうぜんぜん違うんだよ。養殖の脂は滑りが悪くて包丁への抵抗が高い。天然の場合ももちろん脂がつくけど、養殖ほど抵抗を感じないんだ。それから、包丁を洗うときにもわかる。天然の脂は割と簡単に洗い流せるんだけど、養殖のほうがしつこい感じがするね。
脂の量も質も違うんじゃないかな。何が原因でそうなっているのかわからないけど。

美味しいと感じるのは人それぞれだ。
だけど、質の低い脂だったり、多すぎる脂は敬遠したい。魚は全般的に熟成させた方が美味しいのだけど、脂が酸化してしまうようだと、熟成する前に美味しくなくなってしまうというのもあるね。

今日はしっかり料理屋らしい話になったかな。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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