エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 人前で話すのは場数じゃないんだよね 2021年4月27日

スピーチやプレゼンというのは、スキルが必要なのです。誰しも人生のうちで何度かは「人前で話をする」という機会がやってくる。嫌だと思っていても、なかにはどうしても断れないこともあるでしょう。ぼくだって同じで、人前で話すことを余儀なくされて、いつの間にか喋れるようになった。と言いたいところだけれど、そうじゃない。

社内、観光協会、商工会議所、講演会というところで「人前で話す」ということをしていると、「お話上手ですね」と褒めていただくことがある。世の中の「人前で話す」を仕事にしている人達から見たら、決して褒められるようなレベルではないのだけど、一般的には上手にしゃべるほうだと思う。だから、「スピーチが上手で良いね。羨ましい」などと言われたこともある。もちろん褒めてもらえたらとても嬉しいけれど、単純に回数をこなしたら上手に喋れるようになるわけじゃないんだよね。

ついつい「場数を踏めば誰でも出来る」という錯覚を起こしてしまうのは、みんな言葉をしゃべるから。日本人だったら、当たり前のように日本語を喋っている。そのくらいありふれたものを使って行われるのが「スピーチ」なんだよね。その分だけ簡単そうに思えるということもあるのかもしれないね。

このエッセイでも何度か触れたけれど、ぼくの前職は「営業マン」である。伝えること、対話することが主な仕事と言っても過言ではないよね。だから、ぼくらは何をしたかといえば「学ぶ」「訓練する」を繰り返し行った。接客だって、仲間を相手に何度もやったしね。プレゼンテーションは何度もリハーサルをして、直してを繰り返したよ。もちろん、先輩や上司から始動を受けたこともあるし、書籍だっていろいろ買ってきて読み込んだりセミナーも参加した。
ちょっと笑っちゃう話だけれど、ジャパネットたかたの2時間特番を録画してモノマネしたということもある。余談だけれど、高田前社長は最初から高音ボイスじゃないし、出だしは割とゆっくりしゃべる。というようなことは、研究したからこそ見えてきたことなんだよね。他にもディズニーランドのジャングルクルーズに一日中何回も乗ったこともあるし、落語のCDを買ってきて練習したということもある。

ぼくが人前でしゃべることに、一応のスキルを持っているのは「インプットとアウトプットをしまくった」から。それでも「話す」ことの専門家には遠く及ばないのだけどね。だから、あたかも天性のセンスのような文脈で褒めてもらってもねえ。そんなんじゃないんですよ。めっちゃ努力したもの。

努力で手に入れたスキルには、ひとつとても良いことがあるよね。それは「教えられる」ということ。天才じゃないからこそ、ロジックで組み立てた努力だからこそ再現性が高い。そういうわけで、講師とか指導の依頼をもらうことがあるんだけど、天才じゃないからこそだよね。

こんな感じのことが、ものすごく長い時間かけて積み重ねられてきたのが今の世界だろうね。もちろん日本料理もおなじこと。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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