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今日のエッセイ 冷凍加工施設の未来はどうなる? 2021年9月29日

2021年9月29日

昨日の続きです。もう少し話を進めて、冷凍加工施設の将来を書いてみようと思います。保存技術というのは、長い長い食の歴史の中での大きな課題だったんだよね。それもずーっと。だから、穀物が栽培されて農業が発展したし、胡椒みたいなスパイスが流行した。すしだって元々は保存技術を追求した結果だ。

従来の保存技術というのは、どちらかというと化学に則ったものだ。発酵させたり、乾燥させたり、塩や砂糖や酢に漬け込むことで長期保存をすることを可能にしてきた。保存ができるようになることで、人類は自由な時間と豊かさを手に入れて、食糧生産以外の産業を発展させることが出来るようになったわけだ。

現代では、もっと工学的なアプローチで保存技術の進歩も進んでいる。みなさんも御存知の通り、冷蔵庫や冷凍庫、真空パックや缶詰といった方法だ。化学じゃなくて、物理的なアプローチと言っても良いのかもしれない。
もちろん今も化学的なアプローチもずっと行われているよね。保存料が含まれている食品がたくさんあるのは、たぶん多くの人が知っているだろうし、目にする機会も多い。それに対して、健康被害を心配する声も多く聞かれている。ちゃんと試験をしていて安全だと認められた範囲で使用しているわけだから問題はないと思うんだけど。どの程度取り入れるかは購入者側に判断を委ねられている。

そんな心配をするくらいだったら、物理的なアプローチがもっと進化しているのだからそっちを中心にしたら良いのじゃないかと思うんだよね。化学薬品よりも保持期間は短くなるかもしれないけれど、それでもいいんじゃないかしら。だって、冷蔵庫の中にそんなに長く置いておかないでしょ。一番長く置いているのは、食品売り場や流通経路なんだからさ。

この流通上の問題を解決するには、冷凍するか保存料を使うかって話が主流になっているみたい。鮮魚の場合は生きたまま移動というのもあるのだけれどね。冷凍にしても生簀ごとにしても、とにかくコストがかかるじゃない。だから保存料が主役になっちゃうわけだ。
でね。どれがどのくらい売れるのかはわからないし、売り切れになると販売機会を逃して売上にも影響が出るから、ちょっと多めに仕入れることになるでしょ。これが食品ロスに大きな影響を与えることになっているんだよね。

これを、なんとか出来ないかなと。地元の良心的なスーパーマーケットでは、その日の分だけその場で調理することを始めたし、ぼくら飲食店は仕出し弁当をしている。ただ、これはこれで労働のロスが生まれやすいんだよね。ぼくらはロスだと思っていないけれど、大手の加工場と比べると効率が悪いわけだ。
どこのお店でもやるべき仕込みと言うか下ごしらえみたいなことはあって、近い業種だと手順がほとんど同じだってこともある。場所が違うからそれぞれに稼働しなくちゃいけなくて、稼働のロスが発生するんだよ。

これらのことを全部踏まえると、地産地消で必要な分だけを作って販売すること、皆で使える加工場があること、物理的なアプローチで保存技術が導入されていること、っていう条件を満たせたら良いんじゃないかなと。今すぐは難しいかもしれないけれど、個店が個店の良さを活かしつつ、一次加工が可能な場所があったら品質的にも経営的にも良い環境が作れるんじゃないかと思うんだよ。

今日も読んでくれてありがとうございます。これを実現するには施設を作ったくらいじゃダメで、賛同者がたくさんいないとだよね。ちょっとずつ仲間に相談しながら進めていきたいなと思っています。セントラルキッチンみたいだけど、セントラルキッチンとは違ったアプローチ。やってみる価値はあるよね。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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