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今日のエッセイ 効率化と非効率の文化 2021年4月20日

2021年4月20日

ビジネスの基本は効率化です。という話は何度も聞いたし、実際に会社の経営ってそうなんだろうなと肌で感じる部分も多い。なんだけどさ。それ以外の部分もどうにかならんものかと思うのです。

何か商品を作るとします。モノでもサービスでも体験でも、それも商品とします。文章だって良い。より良い商品を作ろうとすると、手間がかかる。手間というのは、人数や工数や熟練度を含めて人件費に反映される。ある程度の市場が出来てくると商品価格が一定水準に落ち着くわけで、そうすると相対的に人件費が高くなってくる。人件費が高くなると機械化などで効率化して、手間がかからないようにする。
というのは、イギリスで起こった産業革命以降の全てのビジネスで起こっているよね。アメリカが自動車産業でブレイクしたときだって、人件費が高い割に熟練工が少ないから効率化した結果だという。

歴史を知れば知るほど、そうだよなあと思うんだけどさ。一方で効率化の中で消えていったものだってあるわけでさ。全てが残っていなくちゃいけないとは思わないけど、効率化から漏れるものも少なくないような気もするの。
効率化って、大量生産をするということがベースにあるよね。だから、一定の規格に収めなくちゃいけない。となると、規格外の人たちは自分に合ったものじゃなくて自分を合わせなくちゃならないんだよ。それでも、多品目だから、どこかしら探せば自分に合う商品に出会えるんだろうけど。その探す手間って非効率だよね。

シンプルな話でさ。目の前の人に合わせて商品を作ることが出来る人がいたら、その人にお願いすればニーズは満たされる。
けれども、それだと売上が限定されるから相応の金額をもらわないと商売にならないよね。値段が高いと、当然ながら客数が減るから、やっぱり苦しいということになる。

別に困らない、ということもたくさんあると思う。それはそれで良い。全てのニーズに応えるなんて出来るわけもない。だけど、文化とか社会課題とかはどうなんだろうね。どうもそのあたりに大切なものがこぼれ落ちてやしないかね。
と。別に答えなんか思いついていないんだけどさ。なんとなく引っかかるんだよね。

世界中の貧困問題はかなり良くなったし解決に向かっているけれど、格差は益々開いていくばかり。この現象が効率化を推し進めた結果のひとつと見るのは乱暴なんだろうな。

手わざが命の職人は、基本的に非効率で、非効率の中に美徳やら文化やらが潜んでいると思っている部分もある。文化ってのがなくなると、人間を人間たらしめるものがひとつ欠けたような気にもなる。

ふわふわした考えも書き出せば整理できるかと思ったけど、そうでもなかったな。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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