エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 史跡保護の過保護のこと。 2022年4月6日

日本全国にお城はいくつあるんだろう。古い時代からそのまま残っているのは12。城跡や復元も含めれば、2000弱。過去にあったすべてのお城を合わせると2万~5万となっているらしい。なんだかとんでもない数だよね。

お城と言っても、戦国後期の天守閣を持つ建造物ばかりじゃないわけだ。館だったり、要塞だったりもれっきとしたお城。もっと言ってしまえば、吉野ヶ里遺跡みたいな櫓と塀と堀があればお城といえる。厳密な定義をするとややこしい。

とにかく、お城に関係する史跡だけでも結構多いということだ。各都道府県に平均40城くらいあるということになる。その中でお城を観光のシンボルに出来ている市町村は恵まれているということだ。掛川だって上位ランクということになる。

文化遺産をどうしていくのか。実は、文化や学術研究や観光、各方面で文化遺産の扱いについて考え直すことが必要になっている。もうね。維持費が大変なのだよ。お城だけでもこんなにたくさんある。神社仏閣や名勝地、庭、記念館などを含めると途方も無い数になってしまう。だから、必要な部分だけを残してあとは、忘れるということにするしかない。

けれども、文化財の中にはそうもいかない場合がある。国や県や市が指定する「指定文化財」があるね。重要文化財とか。重要文化財の指定を受けるというのは、とても名誉なことだ。例えば、生まれ育った生家が歴史的価値のある建物で、周辺環境や継承されてきた文化も認められて「重要文化財」になったとしよう。

重要文化財指定は、確実に重荷になるはずだ。

あまり知られていないけれど、実はロックされるのだ。指定されたときの環境を自由に変更することができなくなる。壁の補修ひとつとっても、そうカンタンではない。一部であっても改修する場合には申請が必要だ。それに、基本的に火を使うことが出来ない。調理は基本的に電気。古い時代に指定されたところだと、古いタイプの電気コンロが設置されている。これをIH調理器に変えるのも申請が必要だ。

日本家屋というのは、人が手を入れながら維持することを前提に作られている。周辺環境の整備、つまり草取りや雑木の伐採だってなかなかの重労働なのだ。

重文保護のために確保されている国家予算は、その他の予算に比べるとかなり少ない。日本以外の国と比べてもぶっちぎりで少ない。そう。足りない分は所有者の個人的な努力によって賄われているのだ。

だから、貴重な史跡であっても気づかれないうちに壊す。指定されて大変な苦労を強いられるくらいなら、なかったことにする。外から見ていると、もったいない、と言いたくなる。けれども、住人にとっては大変なことなのだ。

史跡はその状態を保護するための対策がなされている。この部屋には入っちゃダメ。ここは触らないで。触りそうなものは全部ガラスケースの中。そんな感じ。

茶室と庭と屏風。これが有名な施設をちゃんと味わうのなら、部屋に入って座らないとダメなんだよ。デザインした人は、部屋に座ったときの視界に合わせているんだから。そんな制限をするから、人が面白がれない。だから、入館料収入が伸びない。収入が少ないから保全費用の捻出に苦労して、細かなところでほころびが出る。

そもそも、手を入れ続けることを運命づけられているのだ。新しい木材に差し替えることが本質。古い木材を使い続けることが価値の本質じゃない。

ちゃんと楽しんでもらって、その収益でしっかりと保全する。そして、良い状態でまた楽しんでもらう。その循環が当たり前だと思うんだ。過保護にしたら、結果的に自滅の道を描いちゃうんだよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。偉そうなことを書いたところで、書いただけなのだ。実際に何かをしているわけではない。知らない人がいるようだったので、ちょっと書き出してみたという程度。どうにかできんかなあとは思っているんだ。どうしよっか。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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