市役所の人と話をしていると、とても大変そうだなという印象を抱く。なにせ、2~3年で部署を移動するんだから。短すぎやしないかい。慣れてきた頃には別部署。地元ではないけれど、市役所で働く友人は観光の業務で知り合った。観光に携わる直前は建設業界で、この度市民課に移動になったそうだ。
人事異動をどのように捉えるかは本人次第だ。そりゃそうなんだ。だけど、個人的には大変だよなあと思う。やりたいことが見えてきても、それを実行することなく移動するなんてこともあるわけだ。様々な業務を経験することで視野が広がる。それはそうだ。ジェネラリストの育成としては当然そうなる。一方でスペシャリストもいて欲しいとも思うんだよね。
ジェネラリストと、多能工がごっちゃになって考えられていることもあるみたいだね。多能工というのは、いろんなポジションをこなせる人のこと。ポジションというと違って聞こえるかな。いろんな分野にまたがって活動できるということ。
市役所のような仕組みは、まさに多能工とも捉えられる。これは、市役所に限らず一般企業でも置き換えられる。大きな組織はそうなるよね。
個人的な解釈はちょっと違う。いろんな分野にまたがって活動することは同じなのだけれど、その時間軸がだいぶ乖離しているんだ。基本的に大組織で語られるジェネラリスト志向は、年単位での移動になる傾向にありそうだ。それはそれで習熟するためには必要な時間だよね。
一方で、多能工としてはどうだろうか。もっと短時間で良いのではないかと思うのだ。
サッカーの試合を例に取ってみよう。相手が攻めてきているときは、守備を行う。個人としての守備力はおそらく、ディフェンダーが長けているだろう。でも、組織的に守備を行うためにはフィールドプレイヤーが連動して動く必要がある。だから、オフェンスのプレイヤーも守備を行う。ディフェンダーがある意味指揮官のように要となって、サブを務めるのがオフェンスになる。
一方で、攻めるときはこれが逆転する。オフェンスのプレイヤーが活躍できるようにディフェンダーが動くことになるわけだ。
更に、右サイドの選手が左サイドのカバーをすることもある。試合中に選手が入れ替わったり、フォーメーションが変わったりすると、選手は応じてポジションを変化させる。
こんな感じで、業務の役割を流動的に変動させていくのが多能工のイメージなんだよね。料理人は料理を作るだけじゃなくて、アイドルタイムにはホールのセッティングを手伝うこともある。逆に、ホールスタッフが料理の仕込みを手伝っても良い。もっともっと細かい時間軸で動くのだ。
それぞれのシーンで、コントローラーは入れ替わる。料理を手伝っているときは、料理長の配下としてホールスタッフも振る舞う。その代わりに、ホールを手伝っているときはホールマネージャーの配下として料理人は行動する。それぞれが、それぞれに得意分野で活躍する。それを流動的にみんなで助力する感じだ。
この考え方だと、のんびりできる時間がかなり少なくなる。だから、疲弊しやすいのが難点なんだよね。その代わりに、少ない人数で広い領域を効率よく動かすことが出来る。業務量にもよるけれど、結果として仕事が早く終る。
あと、お互いの業務内容に対して理解が深まるよね。これは大きい。お互いの業務内容が見えていなくて、その結果思考の違いに気が付かなくてディスコミュニケーションを引き起こす事例は多い。言葉で共有してもらいだけじゃなくて、実際に体験しておくと見える世界が広がってくる。視野が広がるわけだ。
広い視野で仕事を見渡すことが出来る人材がジェネラリストだとすれば、多少はこのような動きで補えるんじゃないだろうか。専属従事でなければわからないことも多いだろうけれど、スペシャリストをやりながらでも視野を広げることは可能なのだ。
今日も読んでくれてありがとうございます。わざわざ言われなくてもわかっているよ。そうなんだ。だけど、これって仕組み化しちゃわないと機能しないんだよね。気持ちでなんとかしようとしても、難しい。大きな組織であればなおさらだ。その点、うちは多能工的な業務ばっかり。だって、小さいチームだから。