エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 挑戦とインプット 2021年3月14日

2021年3月14日

まだ僕がサラリーマンだった頃の話です。

「お前はいつまで○○○で働いているんだ」と言われたことがあるんですね。というのも、僕は同じ業界のライバル企業に転職したんですよ。で、新しい会社はホントにその業界で新規参入の会社だったので、いろんなことが出来ていなくて、始めの頃は特に僕の知っている知識がかなり役に立ったんです。だからちょっと調子に乗っていたんだろうね。「めっちゃ役に立ってるじゃん」みたいな感じで。

ところが、しばらくした経った頃に先程のセリフを上司に言われました。当時の僕は「??」ってなくらいの反応しかできなかったのだけれど、後になってずーっと響いてくることになるセリフになりました。

「これまでの経験を生かしてがんばります」みたいなことを抱負として言うことがあるじゃないですか。あれって半分くらい危険な考え方なんだと思う。今まで積み上げてきたスキルを吐き出すことだけで仕事をしてしまうと、自分の成長が止まる可能性がある。だから、自分の持っているキャパシティの半分くらいは過去の経験を活かしながら、残りの半分で新しい挑戦をしていくというバランスが大事だと思っています。

概念的な話になっちゃうんですけど、自分の中にタンクみたいなものがあって、そこにスキルとか知識とかいったものが溜まっていってるイメージなんですね。その中から必要なものを取り出して仕事をしていくんだけれど、ずーっとそれだけをやっているといつかどこかで枯渇するときがくるような気がしている。もちろん減ることは無いんだけど、なんというかな、足りなくなるという感覚ですね。

だから、どんどん次のインプットをしていかないといけない。

インプットするというのは、書物を読んだり誰かに聞いたり、行動して得た体験だったりもするし、自分の脳みそをフル回転させて自分自身で考えたり、考えたことを実行して得たことだったり。そういうことをやる。僕の持っている「時間」という資源は限られているから、スキルを持ち出す「アウトプットの時間」と取り入れる「インプットの時間」をコントロールする必要があるのかなと感じています。

例えば、週に何回も来店してくれるお客様がいるとして、そのお客様が毎回「おまかせ」で注文をされる方だとしますよ。そうするとね、料理人は毎回同じ料理を同じように出すわけにはいかないんです。だって飽きるから。インプットをしていないと、たぶん1ヶ月かそこらでネタが尽きるだろうね。父なら1年位はいけるのかもしれないけれど。それこそタンクの量の問題です。だからどんどん挑戦して自分の中のタンクを充実させていくようにしてるんです。

うちの店の常連のお客様は、基本的に「おまかせ」なのです。そして、僕らが新しい挑戦をしていくのが楽しいんだとおっしゃっています。当然手を緩めるわけにはいかないですよね。そのせいか、事務所にはちょっと考えられないくらいの量の料理関係の書籍があります。

今日も読んでくれてありがとうございます。ほんと家庭料理で献立を変えていくのって大変ですよね。尊敬します。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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