エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 料理上手になる為にひとつだけ 2021年4月26日

2021年4月26日

料理が上手になる方法で一番大切なことはなんですか?という質問をいただきました。ぼくらが大切にしていることはいくつもあるけれど、ひとつだけと言われたらこれかな、というものを紹介します。

「美味しい料理を食べること」

これに尽きるんじゃないかと思う。
ゴールのイメージをちゃんと持つ。ということと同義だよね。はじめのうちはいろんな料理を食べても違いがわからなくても良い。というか、それぞれの違いを理解するのは難しいと思う。ある程度の知見が蓄積されたところで少しずつ「違い」がわかるようになるし、じぶんの好みというものが見えてくる。

とりあえずそれなりに。という気持ちで洋服を着るのなら、オシャレな洋服や組み合わせ(コーディネート)を考えなくても良い。けれども、少しでもオシャレになりたいなと思ったら、少しずつ知見を溜めていくのが良いだろうね。例えば、いきなり20万円の革靴を買うというようなことをしなくてもさ。まずは5万円くらいの靴を買う。そのために、いろんな靴屋さんに行って足を入れてみるだけでも良いよね。
ひとつの靴屋さんで10足くらい試してみて、それから5件くらい回ってみる。そうすると、50足分の知見がたまるよね。比較してみて、じぶんの足にフィットする型がどんなものなのかわかる。少し足先が丸いほうが良いとか、尖っている方が良いとかいう好みも見えてくる。
「じぶんにとって」良いもの。
それが少しずつ見えてくるんだよね。

料理も同じようなところがあって、細かなテクニックを磨く前にたくさん食べ歩くのが良いよ。どのあたりに寄せていったら美味しくなるのか、そういう基準みたいなものが見えるようになるから。まずはそこからスタートするのが良いと思う。
そして、これにはもうひとつ大きな効用がある。じぶんの思い込みという鎖から開放してくれるんだ。
肉じゃがでもさばの味噌煮でも何でも良いのだけれど、こういう定番と呼ばれる家庭料理には「たったひとつの正解」がない、どころか無限のパターンが存在する。料理人同士で会話をしていても「そんなのあり?!」って言いたくなるような調理方法が飛び出してくることもあるんだ。それで美味しかったら良いじゃない。ということを知ることが出来る。

とかく料理が苦手な人は「~でなければならない」と考えている人が多いみたい。統計をとったわけじゃないけど、経験的にそんな気がするんだよね。究極的に、料理っていうのは「美味しければ良い」わけですよ。もちろん健康に害があるものは論外ね。すごく自由。

「美味しさの基準が見えてくる」「じぶんの好みがわかってくる」「料理の自由さを感じられる」
そのために

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

-エッセイみたいなもの
-, , ,