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むとう兄弟がお送りする「食を面白く学ぶ たべものラジオ」
少し変わった経歴の料理人兄弟がたべものの知られざる世界を、ちょっと変わった視点から学んでいくポッドキャスト番組です!
味噌汁の主役。味噌の種類別の紹介です。どんな味噌とどんな食材が相性がいいのか。地域別の特徴とか、味のクセみたいなものまでたどり着けたら良いな。
いちばん有名なところから行きましょう。米味噌ね。中でも全国で一番多く流通しているのが「信州味噌」だ。武田信玄バンザイ。400年以上前の努力が全国制覇してますよ信玄さん。本人は三方ヶ原の戦いあたりで病死しちゃったけど、味噌は天下とったかもね。
米味噌のなかでも、甘すぎず辛すぎずの真ん中。白でも赤でもない淡色味噌と言われたりもするけど、どっちかに分類するとなれば白味噌に近いかな。赤味噌みたいに長期熟成はしないから。これが一番万能っぽいところもある。真ん中だから特徴がないとも言われるけど、相性が悪い食材も見つけにくいというのが特徴だ。
次は仙台味噌。明治まで江戸のまちで一番多く流通していたのがこれね。日本3大味噌の一角で、米味噌の中の赤味噌の代表格に上げられる。ちなみに白味噌、八丁味噌、仙台味噌が3大味噌らしいんだけど、信州味噌も西京味噌も入っていないでしょ。これは2つまとめて白味噌にくくられているから。この3大味噌って江戸の人が言ったんだろうね。全国流通量というよりも江戸で普及している味噌の内容だもん。まあ、いいや。
この3大味噌の中で一番塩分が高いのが仙台味噌ね。京都の西京味噌が一番少なくて5~7%、信州味噌で10~12%、八丁味噌も同じくらいかな。仙台味噌は11~13%だから、一番しょっぱいね。味噌単体を舐めるなら別だけど、味噌汁に関しては塩分濃度は気にしなくていい。だって、作るときには調整するもんね。普通に作ったらだいたい塩分1%前後に収まるよ。味噌汁がしょっぱくなるのは味噌汁を作る人の問題で、味噌は関係ないってことね。
そんなことより一番の特徴は香りとコクかな。長期熟成しているから、甘みが控えめで独特の香りが出る。個人的には、イモ類との相性が他のものよりも使いやすいようにに感じる。というのも、甘い食材を入れても味噌がそんなに甘くないから、中間を取るという意味ではやりやすいって意味ね。あとは、味噌そのものの香りを引き立てる使い方をすると良いかもね。
八丁味噌は現在の岡崎市八帖町(はっちょうちょう)で作られている。昔は八丁村だから八丁味噌。これって凄いことなんだよね。信州は長野県だから県でしょ。仙台は政令指定都市の仙台市。で八丁村って。規模で言ったら絶対対抗できるわけないんだよ。ただ、後ろ盾の武将がやばかった。武田信玄、伊達政宗、徳川家康どどーん。どうでもいいか。
八丁味噌は3大味噌の中で唯一の豆味噌だ。これだけはね、全国的に見ても特殊な味噌なんだよね。醤油に近い感覚。わかりやすい実験があって、白味噌と八丁味噌と仙台味噌お湯に溶かして飲み比べるとはっきりするんだ。白味噌と仙台味噌は出汁を使わなくても美味しく飲める。味噌そのものを楽しむ感じでね。だけど、八丁味噌の場合はイマイチ。それどころか、しょっぱいし、いがらっぽいし、渋みも…。というのが正直な感想なんだよねえ。ところが、出汁を使った途端に八丁味噌の味噌汁がめちゃくちゃ美味しくなるんだ。他の具材が無くても、出汁の旨味を全力で引き出してくれるから「出汁+八丁味噌」だけで飲める感じに仕上がる。
この特徴、醤油っぽくない?味噌汁というよりは、すまし汁の感覚に近い使い方なんだよね。八丁味噌で味付けした出汁に、他の具材を浸して食べるみたいな感覚とでも言うのかな。とはいえ、味噌汁であることには変わりないんだけどね。
料理屋だと、アサリの赤出汁とか、魚のアラの赤出汁とかで八丁味噌を使うことが多いよね。これって、インパクトの強い出汁の出る食材で、味噌よりも出汁を主役にした味噌汁ってことになるんだ。具材よりも味噌よりも出汁を楽しみたい時には八丁味噌を使うとクリアに感じられるはずだ。ただし、あんまり色んな食材を入れて濁った出汁になると苦手だけどね。
豆味噌だけの大きな特徴がもう一つある。普通は味噌を煮立てないのが味噌汁のセオリー。これは、味噌の風味が飛んでしまうからで、味噌以外でベースを作っておいて最後に弱火か加熱を止めてから味噌をとか仕入れるようにする。八丁味噌は豆味噌だから、加熱しても風味が落ちない。だからガンガン火入れしちゃって大丈夫。むしろまろやかになって独特の旨味が出てくるくらい。だから、名古屋名物味噌煮込みが成立するんだろうね。
最後に西京味噌を紹介しておくね。京都といえばこれ。一番甘くて白い味噌。これだけ武将の影響がないのは、そもそも宮中味噌だから。天皇の味噌なんだもん、最強かも。西京味噌の西京とは関係なくて、江戸が東京になって首都になっちゃったもんだから、じゃあ西の都だってことで西京味噌。それまでは庶民には使われなかったから名前なんて無かったみたい。
甘みが主体の短期熟成味噌だから、具材は輪郭のはっきりした味わいが相性がいい。いわゆる京野菜ってそうだよね。小ぶりだけど、一つ一つが濃厚な味。そういうのがバランスが取りやすいと思う。あと、つくねみたいな練り物も良い。単体そのもので味が際立っている食材で、甘みよりもどちらかといえば塩味に寄せるくらいがいいかもね。あと香り系のもの。ミツバとかセリは西京味噌が際立つ感じがあるかな。他の味噌よりも香り控えめだからか。もちろん赤出汁にミツバも美味しいんだけどね。なんというか、ミツバを具材として見てくれるのが西京味噌かなあ。伝わるかな、この微妙なニュアンス。
今日も読んでくれてありがとうございます。だいぶ味噌自体の説明も入れてしまった。これで味噌のシリーズやった時に多少は減らすことが出来るかも。改めて書いておくけど、相性も好みが反映されますからね。論理的にはこういうバランスが良かろうとは思うけど、どの組み合わせも美味しいからなあ。ぼくも困るんだ。あ、書くの忘れてたけど混ぜて使う場合もあるからね。