エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 相対化して俯瞰してみる 2021年7月14日

2021年7月14日

「相対化して物事を俯瞰してみる」ということについて感想をもらったので、ちょっと追記してみようと思います。昨日の記事のことなんだけど、ただ「お酒と人類の深い関係」の感想をまとめたつもりが、思わぬところに流れてしまった。

実は、常々大切なことだと思っていて、前職でも後輩や部下にも伝えてきたことなんだよね。自分がどうなりたいとか、将来の夢や目標があるとする。それが明確な人もいるし、そうじゃない人もいる。でね、いろんなビジネス書には「課題を細分化」して「ひとつずつクリアしていく」ということが書いてあるわけ。正直なところ、わざわざビジネス書に書くような内容だと思えないんだけどね。だって、子供の頃からみんなやってきていることだから。
まあ、このステップ自体は良いものだとして、その手前にやっておいたほうが良いことがあるんだよ。それが、自己理解。平たく言うと、目標に対して今の自分がどのくらい離れていて、どんな場所にいるのかをちゃんと知ることが大切だと言いたいんだ。それがわからないと「課題の細分化」が出来ない。細分化してみても、わりとトンチンカンなことをやってしまうこともある。

イメージするのはカーナビだ。カーナビで最も大事な機能ってなんだと思う?最新の地図データがあることも、適切なルートを演算してくれることも、そしてそれを素早くわかりやすく提示してくれることも、全てが大切な機能なのは間違いない。けれども、「現在地表示」が正確ではないカーナビは全く役に立たないんだよね。カーナビじゃなくて、紙の地図を広げた時に真っ先にやるべきことは「現在地の把握」でしょ?

富士山に登りたい!そんな目標を立てたとする。出発点が静岡県掛川市なのか、福岡市なのか、札幌市なのかでルートは全然違うもんね。そもそも、目指すべき方角すら違う。さらにいつまでに達成したいのかというのを加えると、条件が変わってくる。

掛川市からだったら車で移動する可能性も大きいから、富士山の近くまでそれなりの装備を運ぶことが出来る。だから、登山に持っていく装備は天候によって現場で微調整ができるし、コストもそんなにはかからない。登山開始の時間だって調整しやすいよね。そもそも、近いのよ。だから、掛川市の何処かから富士山を目視することが出来る。

札幌市をスタートにすると話が大きく変わるのはわかりやすい。まず、車で行くかどうかは悩ましいところだよね。荷物をたくさん運べるけど、長距離運転が必要になるし時間がかかる。公共交通機関を使うか。千歳空港まで電車で移動して、富士山静岡空港へ降りて、電車駅まで移動したら…と考えると物理的距離以上に心理的な距離を感じるよね。装備はどんなものを選ぶのかというところで、相当厳選しなくちゃいけないよね。まさかスタート地点から完全防備というわけにもいかないだろうし。日程調整も複雑になる。経由地も多い。したがって、かかるコストも多いよね。コストっていうのはお金以外も含めてだけど。そもそもだけどさ。まず、富士山に登ろうという目標を変えるかも知れないよね。高い山に登りたいというだけだったら、北海道内の山に変更するかも知れないし、東北地方にするかもしれない。逆に、海外に行くかも知れない。そういう可能性を探すことだってある。それでもどうしても富士山が良いとなったら、あらゆる手段を考えて計画を練るわけだ。それこそ、お金を貯めるとか借りるとか、そんな段取りから考え出すよ。

これを全部他のことに置き換えてみると、現在地の把握がどれだけ大切なのかがわかると思うんだ。ぼくらがやっている「経営」は、いろんな本でよく登山に例えられるんだけどね。まず最初に「いまどこ?」をやらなくちゃいけない。ということを書いている本に出会ったことがないんだけど。だから、後輩や部下にはそれを伝えてきたし、ぼくも今でも気をつけている。

じゃあ、どうやって現在地を把握したらいいの?ということになるんだけど。これさえやっとけば大丈夫というような、そんな楽ちんなメソッドはないと思う。観察をする、学ぶ、調べる、考える、をずーっと延々と繰り返していく作業が必要だと考えてる。これが、冒頭の話につながるのね。相対的に自己を俯瞰してみるために、他者や環境や時代への理解を深めることだと思うんだよ。
しかも、他者つまり人間も、環境も時代も全部ナマモノでさ。理解したと思った次の瞬間には変容を始めるでしょ。同じでいるということがないわけ。ランドマークが消えることもあるし、自分が移動することもあるし、他者も動く。だから、ずーっとやらなくちゃいけないの。これを「大変だなあ」「苦しいなあ」と考えるか「実に興味深い」とか「おもしろっ」と思ってやるかで世界の見え方が全然違うんじゃないかと思う。

今日も読んでくれてありがとうございます。そういう意味で、他者を知ることで自己を知るという「相対化」と「俯瞰」が大切だと考えているんだけどね。これを読んだみなさんはどう思いますか?

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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