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今日のエッセイ 知ってるようで知らない「ハモ」のおいしい話。 2021年5月30日

2021年5月30日

鱧の旬は一年に2回あって、初夏から夏と晩秋。もう鱧の時期が始まったのだから、初夏ということになるのかな。今年は何かと早いよね。先週も書いたな、これ(https://kacha-muto.com/wp-admin/post.php?post=3910&action=edit)
今回は「鱧(ハモ)」自体を掘り下げてみることにする。というのも、実は日本中のほとんどの人にとっては「レア物」の魚だから。存在は知っているけどさ。お前誰やねんという存在。じゃない?

住んでいるのは海なので、海水魚。見た目がうなぎみたいでニョロニョロしてるのは、親戚だからね。古い書物を見ると、関東から南の海岸沿いだったらアチコチで捕れたみたい。縄文時代から食べられていたんだって。

白身魚で淡白な味なんだけど、ヒラメとか鯛に比べると脂がのっている。けど、うなぎほどじゃない。ヒラメの10倍でうなぎの60%くらい。
実はこの脂質のバランスがスゴいんです。うなぎ、特に養殖のうなぎの場合脂が多いから調理方法が少し限られるということがあるんだよね。出来なくはないけど脂が強すぎて合わない。みたいなこと。
これが、ハモくらいの脂質だと大体の調理方法に使える。他の白身魚よりも濃厚なコクがあるけど脂っこくない。この絶妙なところがハモの美味しさの要素だと思う。

ハモの厄介なのは、めちゃくちゃ小骨が多いところ。多いのは、まあ長いからってこともあるんだけど、小骨だけでも500本以上とか。そして、その小骨の構造がちょっと特殊。血合い骨っていうんだけどね。これが外側の皮に貼り付くみたいになっている。血合い骨は鯛にもアジにもあって、普通の魚は引っ張れば抜ける。だけど、ハモは特殊な形状だから普通に引っ張っても抜けないのだ。いや、見合ったやり方で頑張れば抜けないことはないのだけど。まあ、一般的に有名なのは「骨切り」だよね。

「骨切り」というのは、皮一枚ギリギリのところを残して身と骨を細かく寸断すること。1寸に26回以上で合格と言うから、1~1.5mm程度の薄さで身と骨を切るということになる。これをやることで、ほとんど気づかないくらいに骨が細かくなるので食べられるようになる。この「骨切り」がハモを「レア物」にしている原因じゃないかな。この技術、ハモくらいしか使わないから。そのためにわざわざ練習するの大変じゃない?

さて、ハモ料理の代表格といえば「ハモの落とし」だ。他にもしゃぶしゃぶ、焼き物、天ぷら、すまし汁、和え物などなどいくらでも料理はあるけれど。だいたいテレビなんかで紹介される時は「ハモの落とし」が代表として選出される。梅肉がちょんと乗っかってる、アレね。
「ハモの落とし」は栄養摂取の面でめちゃくちゃ優秀。なんたって骨ごと食べているわけだからカルシウムが豊富でしょ。カルシウムはタンパク質と一緒に食べると吸収率が上がるんだ。更に梅肉が効果を挙げていて、脂っこさを感じにくくして、骨も柔らかくなって、カルシウムの吸収を助けるんだよ。美味しいからって理由で梅肉を使っていたのかもしれないけど、化学的に意味があるって証明されている。風習なのに効果がちゃんとあるって、いろんな事例があるよね。人間の本能というか直感というか、スゴイよ。

今日も読んでくれてありがとうございます。日本人はカルシウム不足の傾向が強くて、必要量の80%くらいしか摂取できていないらしいんだよね。不足するとカリカリした性格になりやすいし、高血圧、動脈硬化、糖尿病の誘引にもつながるからね。せっかくなら美味しく効果的に吸収すると良いね。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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