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今日のエッセイ 鱧のシーズンが始まる? 2021年5月18日

2021年5月18日

鱧(ハモ)のシーズンが始まります。ハモと聞くと京都を思い浮かべる人が多いかもしれませんね。実際、ハモと言えば夏の京都なんだけど、ここ遠州地方もハモの産地なんだ。浜名湖で底曳網漁をすると良質のハモが取れるんだよね。ノリが美味しい海はこういう魚も美味しく育つのかしら。瀬戸内の淡路あたりもそうだもんね。

ハモの旬は実は2回ある。ということを知っている人は意外と少ないんだよ。
ハモの旬は夏と秋。ハモは9月に産卵をするんだけど、そのために餌をたっぷりと食べるのが夏なんだ。だから濃厚な味わいになってくる。ということで最初の旬が夏。お腹にタマゴを抱えたハモなんかも捕れるのはこの時期だね。いくらみたいに粒が大きいタマゴじゃないから、タラコみたいにして漬け込んだり、ばらして塩辛にしたり、和え物にしたりといろいろ使いみちがある。けっこう美味しいんだよ。

最も美味とされているのは晩秋の11月ころ。これが2回めの旬だ。冬眠のための栄養を蓄えた状態だから脂が乗って濃厚な旨味がある。夏よりもこっちの方が濃厚なのは産卵が終わっているからというのもあるね。タマゴを抱えているときは「タマゴを育てる」に栄養を使ってしまっているから、親の方は晩秋ほどの蓄えをもつわけじゃないんだ。親ごころだね。
タマゴを生んだあと、今度は自分自身のために栄養を蓄え始める。これが晩秋のハモがもっとも美味しい時期なんだよ。

流通しているハモは800gくらいのものが多くて、それが良い型のハモだということになっている。それはそれで良いのだけれど、ぼくは2kgを超える大物が美味しいと思っている。もちろん、どんな料理に用いるかで違うんだけどね。ただ、お刺身にするとか焼き物にするとかで言えば、状態が良い大物の方が芳醇で濃厚な味わいだと感じるんだよね。
これは料理人の中でも意見が分かれるところなんだけどさ。

小型のハモが多く流通している理由は、次の3つなんじゃないかと思っている。
小型の場合はオスか、メスでもあまりタマゴが大きくないから味が乗っている。
基本的に若いから身が柔らかい。
骨切りをするのに都合がよいギリギリの大きさ。

大型のハモはね。骨切りがめちゃくちゃ大変なんだよ。大きいから身がよじれてしまって的確に骨を切るのが難しいし、そもそも骨自体が太いからかなり細かく切らなくちゃいけない。一般的には1寸に24回以上と言われているけれど、大型の場合はもっともっと細く骨切りをするんだよ。じゃないと、食べたときに骨が気になって味わうどころじゃないもの。

今日も読んでくれてありがとうございます。本当は夏が旬とは言えないんだけどね。流通の便が悪かった頃、京都で夏に提供できる魚が鱧しかなかったというだけのことなんだ。カツオも2回あると思えば、ハモだって2回あってもいいか。これからしばらくの間はハモを使った料理が多くなります

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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