エッセイみたいなもの

今日のエッセイ AとBをくっつけるC 2021年2月27日

水と油って混じり合わないものの代表ですよね。だから「AとBはまるで水と油だ」というような表現が一般化している。

確かに水と油は混ざり合わないけれど、その2つを混ぜて作る料理だって当然ある。水といっても、H2Oではなくてお酢や醤油や出汁を含んで広い意味でということだけれど。

例えば、酢と油を無理やり混ぜると真っ白く乳化する。これがドレッシングの基本形。思いっきりかき混ぜて乳化させると一体化してドレッシングとして美味しくなる。しばらく放っておくとまた分離するのだけれど、ご使用前にはよく振ってください、ということでまたちゃんと美味しくなる。

その延長上で発明されたマヨネーズっていうのはスゴイやつだ。ドレッシングの例の通り、お酢と油は無理やり混ぜてもしばらくすると分離するのだけれど、卵黄が入っているとしっかりと乳化状態をキープしていられる。卵黄がつなぎ役として素晴らしい仕事をしているのだ。だからマヨネーズは20世紀最大の発明とまで言われている。

人間でも二人だとイマイチ混ざりきらないけれど、もうひとりいると相性の良い三人組でいられるということもある。僕が中学生のころの友人で、何かというといつも3人でいたという仲間がいる。A君とB君で、彼ら二人でいるときも仲良しだったし、A君と僕も二人で仲良く過ごしている。ところがB君と僕になると、基本的に仲良しで二人で遊びに行ったりもするのだけれど、どことなくぎこちなさが漂っていた。三人組の中で喧嘩をするとしたらB君と僕でA君は仲裁役だったよね。A君はきっと卵黄だったのだろう。

数十年が経って、僕も他の二人も随分と酸化した。熟成したという方が言葉はキレイだろうけれど、まあ酸化しちゃったよね。お互いに大人だから学生の頃のように毎日会うわけじゃないから比較しようもないけれど、今はB君と僕の二人でいても分離する感覚はない。もうきっとフレッシュなお酢と油じゃなくなっていて、軽く混ぜるだけで融合してしまうのかな。当然だけれど、料理の世界で古い油と水が混ざり合うということはない。そりゃそうだ。人間は水でも油でもないし、人間関係を水と油に例えているだけなのだから。

それでも、なんとなく面白いなと思っていたりもする。

今日も読んでくれてありがとうございます。卵黄のレシチンが親油基と親水基を持っていて、界面活性剤としての機能を持っているとい言えばそれで終わるのだけれど、それじゃちょっと味気ないでしょ。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

-エッセイみたいなもの
-