エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 緑茶は有料で提供しています。 2021年5月8日

2021年5月8日

掛茶料理むとうは「緑茶」を有料で提供しています。というのはリピーターの皆様には「おなじみ」なんですけどね。改めて、なぜ有料なのかということをお伝えします。

きっかけは本当に素朴な疑問でした。コーヒーや紅茶、ウーロン茶は有料なのに、緑茶だけが無料ってなんでだろう?みなさんも感じたことはありませんか?
日本では伝統的にそうだったから。と言われたこともあるけれど、調べてみたらそんなことなかったんだよね。どこの料理屋さんでも緑茶が無料で提供されていたのは、ほんの半世紀程度のことらしいんです。それまでは「緑茶に値段がついているのは当たり前」だった。
考えてみたら当然なんだよね。そうじゃないと「峠の茶屋」とか「茶店」っていうのが成立しないもの。時代劇で見たことありませんか。

推測でしか無いんですけど。はじめは競合他社とのサービス競争だったんじゃないかな。「うちの店はお茶を無料でサービスしますよ」とね。それが無闇矢鱈と広まってしまったというような気がする。
これって、「本来価値あるもの」が「格安」「無料」だから成立するんですよ。つまり、「本来であれば対価を払って味わうレベルのもの」という「共通認識」が必要。ここ何十年かはとっくに崩壊しているけどね。

歴史背景はさておき、掛茶料理むとうの考える「緑茶が有料」の本質です。
「お金を払って飲むだけの価値がある緑茶の存在を知ってもらいたい」
これに尽きます。

他と比べてどうかという話をしたらきりがないのだけど。そもそも、今飲んでいるそのお茶の味はお金を払う価値があるか、ということを感じてもらいたいなと思います。
だってね。みんなめっちゃ頑張っているんですよ。農家だって、茶師や茶商も、とにかく一所懸命「もっと美味しく」と、毎日毎日神経をつかって作っている。その結果、本当に美味しいお茶が出来上がる。どのペットボトルと比べても何倍も美味しいお茶。比べる時点で申し訳ないか。
ぼくらだって、「この茶葉を一番美味しく味わう入れ方はどうしたらいいかな」ということを、茶葉ごとに工夫しています。

あんまり舞台裏を話してしまのもね。なんだか面白みが減ってしまうようだけれど、美学として。

「今、召し上がっているそのお茶の味は、お金を払う価値がありますか?それとも、そんな価値などないですか?」

緑茶をドリンクメニューに記載するにあたって、100種類ほどのお茶を丹念に飲み比べました。他の食材を吟味するときと同じようにね。その結果、ぼくはお金を払うだけの価値があると感じたんですよね。これだけ美味しかったら「無価値」ってことはないでしょ。当然品質の低いお茶は置いていません。

静岡県の誇り、お茶のプロフェッショナルが精魂込めて仕上げた一品を味わってほしいなあ。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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