エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 料理のレシピに著作権なんてないんだけどね。 2021年6月16日

レシピには著作権や特許というものが基本的には存在していません。まっとうな料理人がそういったものを主張することも、まず無いでしょうね。

ちょっと前に、レシピが似ているからという理由でSNSでちょっとした炎上があったらしい。ちょっとした野次馬根性で除いてみたのね。最終的に「レシピが似ていると言われた人」が謝罪をしていたんだけど、もう違和感しかないの。

まず、どっちも「○○を使った」「ヘルシー」という条件が一緒。これね、そんな条件設定自体が、まずもって「ありふれた」内容。これは良いよね。で、「5分でできる」とか「誰でもカンタン」とか、そういうのもありふれているでしょ。別にパクったと言われるような内容じゃない。更に、レシピを考案している人たちはどちらも「日本人」で「現代人」で、現代の日本の流行や社会情勢を把握している。ここまで前提条件がかぶったら、レシピが似てしまうことくらいあるよね。確率論として。それを「パクったと騒ぐ」かということなんだよね。

例えばこういう話。「旬のサバを使った」「煮物」で、「味噌味」をいかしたレシピを「紹介」してください。ということを10人くらいの「日本人」言ったら?かなりの高確率で「サバの味噌煮」を思い浮かべるよね。もう、そのくらいの話。その中で、その人達なりのちょっとした工夫くらいは付け加えられたりするだろうし、調味料の配合なんかがちょっとずつ違うこともあるでしょう。こういう状態でレシピが少しばかり似ているくらいで「パクったと騒ぐ」かなあ。
というのが、ぼくの率直な感想。

そもそも、料理のレシピには著作権がない。というのは、もちろん法律上のことでそうなっているんだけどさ。それ以前のことなんだよね。料理のレシピというのは「人類の集合知」なんだ。創作物ではなくて「知恵」そのもの。こんなもので、パクっちゃダメって言うわけない。数学でなんとかの定理ってあるでしょ。そういうのと一緒の扱いなんだよね。誰が最初に発見したか、というようなことは後々語り継がれるようなことはあっても、他の人が使うことを規制するなんてことはナンセンスだと思うんだよね。

ぼくらの知らない先人の誰か、が考えて得た結論があって。その結論を土台にしてアレンジをして、また新たな結論を導き出す。そして、それをアレンジして・・・。と繰り返してきたのが、集合知。その途中で生まれたものを「真似しないでよ」といっても、しょーがないじゃんね。ぼくもあなたも、他の誰かの知恵の上にいるんだよ。

料理の場合は、仮にレシピを公開したところで「100%の再現」は難しい。野菜の品種も違うかもしれないし、調味料のメーカーも違うかもしれないし、鍋も火力も違うし、なんなら水も違うでしょ。だから、レシピってあくまでも「参考文献」レベルだったりするんだよね。このレシピで作れば、なんとなく同じような感じの料理ができるよって。そういうものだと思うんだ。
掛茶料理むとうのお客様に「レシピ教えて」って言われることがあるんだけど、そういう時は大概のことは教えちゃう。だって、ほぼ絶対同じ味にはならないもん。それに、ぼくらは常に進化し続けるつもりでやっているから、その途中のものを真似したところで困らないんだよね。数ヶ月か数年後かには、違うレシピに進化しているから。

今日も読んでくれてありがとうございます。この話題について話を振られたので、改めて文字にしてみました。ちなみに、さっきの「炎上したレシピ」ね。めっちゃありふれてるから。ネットじゃなくて昭和時代からレシピを全部見てみたらわかるよ。似ているレシピなんか、お二人が生まれる前に書籍化されてたりするからさ。

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武藤太郎

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