エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 冷凍加工施設 2021年9月28日

現在、かつての厨房の一部を改装工事しています。なにをしているかって?冷凍加工施設を導入する予定なんですよ。工場みたいに大規模なものではないのだけれど、冷凍することでできるようになることも多いからね。

今回導入しようとしているのは、特殊凍結機械。一般的な冷凍庫と違う仕組みで冷凍するものだ。メチャクチャざっくり言うと「限りなく冷凍前の状態を保持したまま凍結させる」もの。
普通の冷凍庫って、品質の劣化があるんだよね。知っている人も多いと思うけど。冷凍焼けもあるし、身崩れもある。どうしても元通りというわけには行かないこともたくさんある。これを解消しようとするのが、今回の新設備の導入だ。

冷凍するということは、食品に含まれる水分が氷になるということだね。水は凍ると体積が増える。細胞の中の水分も体積が増えるから、細胞膜が壊れやすくなる。これがまず、劣化の一因ね。肉でも魚でもいいのだけど、内側がちっちゃな水風船でいっぱいになっていると思ってみて。その水風船の中に入っているのは肉汁とか旨味とかだよ。そのうちの何割かが冷凍によって割れてしまう。この状態で解凍すると、なかの肉汁が外に漏れ出してしまうよね。旨味も減るし、パサパサになる。

これは、普通の冷凍庫でゆっくり凍結させると顕著に起こる現象なんだ。だから、解決方法としては急速に凍結させることがまず第一だね。これだけでも随分と違うのだけれど、今回導入するのはさらに工夫が加えられている。水分子のランダムに繋がった構造を、きれいに揃えて整えながら凍結する。こうすることで、凍結時の膨張をギリギリまで抑えることができるという仕組み。
これが出来るようになるだけで、相当大きな違いが出るんだよね。鮮度保持率で言ったら90%を超えることになるのだから凄い。もちろん、食材や調理方法によって向き不向きはあると思う。ここは、導入後に実験が必要なところ。まず間違いなく差が出るのは鮮魚かな。刺し身にした状態で、どの程度品質を保持できるかは試してみたい。うまくいけば、いつでも良い状態の刺し身を食べられるようになるはずだよね。メーカーの実験だと、握り寿司がそのまま冷凍可能になるとのこと。楽しみだなあ。

ふぐの刺身をまるごと凍結できるようになると良いよね。お皿ごと冷凍することにはなると思うけれど、遠方へも届けられるし。刺し身ってさ。意外と手間がかかるし、ふぐに関して言えば「一番美味しい状態」に整える工程が一番難しいんだよ。とれたて新鮮が一番美味しい状態ではないということね。個体差があるから、それを見極めながら、締めると熟成させるを行うわけだ。
ネットで検索してみると、さすがにここまでやっている事業者はかなり少数派だ。業者によってはとらふぐと他のふぐを混ぜていたりもする。水産事業者だってちゃんとしているところもあるけれど、包丁技術もないままに提供しているところも見受けられる。そういうことすると、業界全体でふぐの価値観が下がって、巡り巡って自分の首を締めることになるんだけどなあ。

近くのお客様でも利点があるはずだよ。食べる当日にぴったり合わせるのって、お客様の側も都合をあわせなくちゃいけない。ぼくらもなるべく時間を合わせるようにはしているけれど、それでもジャストというのは難しいじゃない。少し前もって購入しておいて、食べる直前に解凍することが出来れば行動を制限されずに済むということに繋がるからね。
いろいろ、やってみたいことがあって楽しみだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。現在工事が進んでいる段階なので、営業時間に制限があってご迷惑をおかけしています。楽しみな未来のために挑戦していますので今しばらくお待ち下さい。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

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