エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 食欲の秋よ 2021年9月30日

2021年9月30日

明日から緊急事態宣言が解禁となります。まあ、なんでしょうね。お店の営業としては喜ばしいことなんですけど、気が緩んで感染が爆発するのも怖いなあと思いつつ準備をしているところです。

10月と言われると、本格的に秋が来たなあと感じる。暦は暦でしか無いのだけれど、肌で感じていることを言語化してもらっているようで、ちょっと落ち着くのだ。秋は良いよ。良い。美味しいものがいっぱいあるもの。食材が少なくて献立に困ることもないし、どちらかといえばどれにしようか迷うくらい。

サワラは漢字で書くと「鰆」。魚編に春と書く。これだけを見ると春が美味しいように見えてしまうけれど、旬は秋から冬。妙な話だと思うかもしれないけれど、関東から東海地方はこれからが旬なんだよ。鰆は回遊魚だから、時期によって生息域が変わるのね。静岡近郊は秋から冬、瀬戸内海は春先。
東日本の人からすると、なんで春という字が使われているのか不思議だと思うけれど、西日本では春が旬だったからなんだね。まあ、説によっては春まで美味しいからとも言われてるけど。さて、どうだろう。似たような語源で「冬瓜」もあるからなあ。夏から秋に収穫されるのに冬瓜。冬までもつからって理由らしいのよ。

瓜といえばかぼちゃもいいよね。収穫は夏だけど、貯蔵していると秋から冬にかけて甘味が増す。最近では西洋種のホクホクしていて甘みの強いものが主流になっているけれど、昭和以前からあった和かぼちゃ(そもそも外来だけどね。原産はアメリカ大陸)だと、甘さ控えめで水分が多くてしっとりしている。いろんな食材と一緒に煮物にするときは、和かぼちゃのほうがバランスが取りやすいかな。ま、これは好みか。

意外と知られていないのが、ハモとウナギ。本来の旬はこれからなんだよね。ハモが夏に食べられるのは、昔々の京都で夏に手に入る鮮魚がハモくらいだったから。それで夏の名物になったのね。一番脂が乗って、味わいが深まるのは10月~11月だね。冬眠する前にしっかり栄養を蓄える時期ね。ウナギも本来は同じ理由で産卵後かつ冬眠前が一番味がのる。ウナギの旬が夏になったのは、江戸時代の広告戦略の賜物だ。夏場はウナギを食べる習慣がなくて鰻屋は商売が苦しい。それを平賀源内さんがコピーライターとして救ったのが定着して今に至るってね。

ウナギって鍋にしても美味しいし、その鍋からの雑炊ってこともある。蒲焼きのイメージが強すぎて意外に感じるかもしれないけれど美味しいよ。
秋のハモと言えば、なんといっても土瓶蒸しだね。松茸の香りとハモの濃厚な甘味と、かつおだしの旨味が相まって。はあ、食べたくなってきた。考えた人天才だ。

忘れちゃいけないのはすっぽん。秋は冬眠の前。つまりハモやウナギと同じ理屈で美味しい時期になる。季節の変わり目で体調を崩しやすい時期でもあるから、こういった精力がつく食材は良いね。体調を整えるという意味ではキノコ類だね。キノコは肝機能を整えてくれると言われている。人間の体に丁度いいタイミングで旬を迎えてくれるって、そう思うと自然というのはよく出来ているなあと思うし、人間も自然の一部なんだなあということを改めて感じるね。

今日も読んでくれてありがとうございます。秋の味覚はもちろんこれで収まらない。たくさんあるからね。今年の夏は、料理をする機会がとても少なかったからその分いろいろ頑張ってみようと思います。料理以外のお仕事も始めたから、前よりも忙しくなるかなあ。すっぽん食べて頑張ろ。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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