エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 知ってる?果物や野菜が熟す仕組み。 2022年4月12日

エチレンガスって聞いたことある?耳馴染みのないという人も多いかもしれない。エチレンガスはほんのりと甘い匂いをしているのだけれど、この匂いを嗅いだことがないという人は少ないはずだ。というか、ほとんどいないだろう。一般的にバナナ臭と言われている、あのお甘い匂いだ。

バナナに限らないけれど、いろんな果実がエチレンガスを発生させる。バナナ、リンゴ、桃、キウイフルーツなんかが有名かな。あ、ミカンもそうだよね。フルーツばっかり挙げてしまったけれど、トマトやブロッコリーやほうれん草などの野菜も該当する。

エチレンガスは果実の老化成分だ。自らもエチレンガスを発生するし、外からやってくるエチレンガスの影響も受ける。まぁ、とにかく果実の周りにエチレンガスがあれば、どんどん老化するってわけだ。

果実の細胞と細胞の間に、ペクチンという物質がある。人間でいうと、コラーゲンにあたるのかな。ペクチンがしっかりしていると、細胞同士ががっちりと繋がり合っているから張りがある。つまり固い。ペクチンを破壊すると柔らかくなるというのが老化の仕組み。

コラーゲンが破壊された肌は、柔らかくなる。年齢を重ねていくと、肌にタルミが出来るのと一緒だね。老化っていうとアレだから、人間も熟してるって表現したら良いのかもしれない。

ペクチンは、加熱するかエチレンガスに触れさせるかすると分解される。そのとき、ペクチンは糖に変わるんだ。だから、リンゴを焼くと甘くなるんだね。熟すと甘くなるのもペクチンの変質によるものだ。ちなみに、コラーゲンはゼリーになるよ。

腐ったリンゴ。ほら、学園もののドラマなんかで、箱の中にひとつでも腐ったリンゴがあると他のりんごも腐ってしまうというようなことを言うよね。いや、あんまりドラマ見ないから、ちゃんと知らないんだけどさ。事実として、一つでも熟しすぎた果物が混じっていると、それが強烈にエチレンガスを発生するから、他の個体の老化を促進させるのだ。

意外と知られていないんだよね。これ。

冷蔵庫の野菜室に完熟リンゴを入れておくと、周囲の野菜の老化が促進する。リンゴとか桃はたくさんエチレンガスを発生するから、なるべく冷蔵庫に入れないほうが良いかもね。隣りにあるレタスやほうれん草まで劣化する。ぼくらの業界では足が速くなるという言い方をするんだけどさ。食用として有効なエリアの向こう側に行ってしまうのが早いってことで。

果物や野菜の保存方法を、ひとつひとつ個別に覚えるのって大変じゃない。全部暗記しなくちゃいけない。もちろん、そういう部分もあるんだけど。エチレンガスを知って、熟す原理がわかっていると、長持ちさせる工夫も想像しやすいんじゃないかな。紙袋に入れて封をするとか。エチレンガスが漏れないようにね。風通しの良いとろこに置くっていうのは、エチレンガスを停滞させたくないからだよね。とか。

ところで、腐ったリンゴの話なんだけれどね。よく使われるメタファーだけど、失敗してやしないかと思うんだよ。クラスに腐った奴がいるって、それを排除しようってのもなんだか微妙じゃないかね。周囲の人が影響を受ける事はあるだろうけれど、それは常に起きていることだし。そもそも、腐っているという認定が難しくないかい。果物じゃないんだし。価値基準をひとつに絞りすぎるリスクも有る。まぁ、犯罪レベルならわかるだろうけれど。

今日も読んでくれてありがとうございます。完熟したリンゴがクラスに一人いたら、みんな成長が早くなる。だとしたら、良いよね。人間的にとても成熟した人がひとりいれば、その集団にいる人の人間力が爆上げされるとか。それはそれでありそうだなあ。問題は人間の成熟が不可逆的じゃないことだ。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

-エッセイみたいなもの
-, ,