エッセイみたいなもの

今日のエッセイ ハモ出汁でらーめんでも。2021年8月19日

2021年8月19日

魚を仕入れるとき、だいたい1尾まるごとを購入します。なにをアタリマエのことを言っているんだというようなことなんだけどさ。これが、いろいろと大変なんだよね。

身の部分は良いよ。料理としてはとても使いやすいから。だけど、「アラ」の部分は使い方に工夫が必要だ。それでも鯛なんかの場合は「鯛のかぶと煮」にのように比較的楽。楽というと語弊があるけれど、それなりに認知度もあるし、確実に美味しいのが分かっているからさ。
一方で、どうにも困っちゃうこともあるんだよね。というのが、今回の主題。

この時期は「ハモ」を使うことが多いんだけど、このハモの使い方は神経を使う。基本的に捨てるところがほとんどない。頭や中骨は出汁にするし、卵もいろいろな料理になる。肝臓だって心臓だって、腸や浮き袋だって料理になる。美味しく食べられることを知っているから、簡単にゴミ箱へ放り込むのはどうにも気が引ける。だから、ちゃんと下処理をして食材にするんだけどさ。困ったことに使いみちに困るのだ。

なぜか。

身と他の部分のバランスの問題なんだよね。量のはなし。身の使用量に対して、他の部分の出番が少ないもんだから、アラの部分は冷凍庫で保存する羽目になることも多い。いやね。別に使っちゃえば良いんだけどさ。コース全体のバランスってものがあるじゃない?そんなにたくさんの鱧出汁があっても使い切れないわけよ。
ハモの卵だって、そんなにたくさん食べられるものじゃない。イメージしてもらえるとわかるかな。例えばタラコだとかイクラみたいな料理を作るとして、コースの中で使用できるのは限られたポイントでしかないのよ。他にも和え物だったり煮こごりだったりと使いみちはあるけれど、そう何度も魚卵ばっかりというわけにもいかない。
とまあ、そうこうしているうちに冷凍庫にストックが溜まっていくことにはなるよね。

ちなみに、肝臓は逆に足りない。当たり前だけど1尾につき1個しかないもの。だけど、ハモづくしでもやらない限りはお客様1人で1尾まるごと使い切ることはないんだよね。そうすると、一人に対して肝臓ひとつを提供することが出来ないわけ。だから、ストックしておいてある程度の量が溜まったら「ハモ肝の煮こごり」にしたり、肝焼きにしたりと。まあ、つまりは全てのお客様に提供できるわけじゃないということね。

ということで、困ったちゃんの「ハモのアラ」だ。しっかり丁寧にやってあげたら、メチャクチャ美味しい出汁になるんヤツね。もうこうなったら、思い切って全部使って「ハモ出汁」にしてみようかな。ラーメン屋さんが使ってるような寸胴が必要になっちゃうかも知れないけれど。この出汁で炊き込みご飯にするのも良さそうだよね。いっそのことラーメンスープでも作る?料亭でラーメンが出てきたらちょっとびっくりするかな。
そのうち、限定で「ハモ出汁らーめん」をメニューに加えるかもしれない。食べたい人がいたら言ってください。頑張るから。あ、だけど麺は自家製じゃないからね。さすがに無理だわ。

今日も読んでくれてありがとうございます。うちは「ゴミを減らす努力を惜しまない」ということを現場の指針のひとつにしているから、意地でも使い切るようにしてるんだ。最近じゃSDG'sに則っていると表現されるけれど、料理人としてはふつうのコトなんだよね。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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