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今日のエッセイ 安い酒は悪酔いしやすいのか? 2022年1月1日

2022年1月1日

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正月休みともなると、昼間からお酒を飲む人も多い。

近年では減ったと聞くけれど、それでも日常であるケの日と比べたらハレの日は増えるよね。

なぜ人類がアルコールを摂取するかについては、いろんな説があってそれはそれで面白いのだけれど、今日は「楽しい酔い方」と「つらい酔い方」について触れてみよう。

「安い酒は悪酔いしやすい。」という話を聞いたことがあるよね。都市伝説なのか、それともちゃんと理にかなっているのか。

結論から言うと、ちゃんとした理由があるということになる。まあ、安い酒が全てダメだとか、高い酒だから良いというのとは違うのだけれどね。○○の条件が揃うと悪酔いしやすい。安い酒は○○の条件を持っていることが多い。そういう感じね。

本題に入る前に、と。そもそも「悪酔い」ってなんだ?改めて考えるとちゃんとした定義は無いような気がするんだよね。

なんとなく感覚としてはあるんだけど。あくまでも自分の経験と周囲の人の話を総合した程度のもので考えていくと、「いつもと同じくらいのアルコール摂取量なのに二日酔いがひどい」「飲みはじめて数時間で二日酔いのような症状が出てしまう」「二日酔いのレベルが高い」といったことになりそうだ。

普段の量と変わらないのに。が前提になっているみたいだね。体調や気候の影響もあるけれど、お酒の質によって酔い方に違いがあるということを経験的に知っているようだ。

お酒には不純物が含まれている。

この不純物を「コンジナー」という。不純物が多いほど、悪酔いしやすいようだよ。説が別れているところだけどね。

あと、悪酔いや二日酔いはコンジナーよりも他の要因が大きいから、酒の種類ばかりに気を取られていてもしょうがない。そもそもアルコール摂取量を控えるとか、水分を補うとか、ほかの対処をしたほうが効果的だから。

お酒を飲むと、アルコールが分解されて「アセトアルデヒド」を生成する。

アセトアルデヒドは毒素なので、アセトアルデヒド脱水素酵素とかグルタチオンを働かせて、肝臓で分解していく。

専門用語を並べてしまったけれど、とにかく肝臓がかなり頑張るということだね。実はコンジナーの分解も肝臓で行われる。だから、肝臓の負担がさらに上がるんだ。そうすると、結果的にアセトアルデヒドの分解が追いつかなくなって、毒素にさらされることになる。

まあ、そんなところだ。

安い酒と表現されているのは、古くから日本で飲まれてきた「日本酒の中の」というニュアンスが含意されているよね。

この感覚が拡大して、高いワインよりも安いワインのほうが悪酔いしやすい、みたいに、同じ酒の種類の中で比較表現される言葉になっている。

これらの前提を踏まえたところでいくとね、高い酒に比べて安い酒のほうが不純物が多く残っている可能性が高い。ってことになる。

それはそれで一定は正しいよね。だけど、お酒の風味や旨味はコンジナーの中に含まれている。

コンジナーが全く無い状態というのは、アルコールと水だけになってしまうから。そりゃ味気ないよね。

だから、お酒を作っている人たちはコンジナーの成分バランスを真剣に突き詰めているのだ。

コンジナーには必要な味とそうでないものが混合されている。

だから、不要な部分を取り除いてクリアで雑味のない味わいを作り出そうとしている。醸造過程であったり、醸造後の処理であったり、それはいろんな工夫と努力の結晶なのだ。

安い酒は、コスト的に労力をかけにくいからコンジナーのバランス調整がされていなくて結果的に悪酔いしやすい。そういうことのようだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。

どんなお酒でも、その背景には造り手の知恵と工夫と努力があって、だからこそ美味しく楽しむことが出来るんだね。

今年もよろしくおねがいします。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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