エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 来週はお節句ですよ。 2021年9月4日

2021年9月4日

もうすこしで「重陽(ちょうよう)の節句」ですね。なんとも素敵な表現だなあって前から思ってたんだ。陽が重なる。ってさ。紅々とした秋の気配をほんのりと感じられる風情があって。

ところで、重陽の節句を知らない人も多いみたいですよ。と言っているぼくだって、日本料理に携わっていなかったら知らなかったかもなあ。ほら、日本料理って暦やお節句にはとても敏感だから。そういうのに合わせて献立を考えたりすることもあるのね。
だけれども、重陽のお節句を知らない人に菊の花をモチーフにした料理を作っても伝わらないんだよね。そう、重陽の節句は菊の節句。桃の節句が3月3日にあるのと同じで、9月9日は菊の節句なの。

ちなみに、重陽の「陽が重なる」という解釈は間違い。昔はそう思っていたんだけど、陽数つまり、奇数の最大値が重なっているという意味で、太陽とは全く関係なかったということを知ったのは数年前の話。調べてみないとわからないよね。祖母に聞いたら、そのくらいは常識だって言われちゃったんだけど、だいぶ廃れちゃったんだね。

陽数は、とても縁起がよい数字とされているから、節句は基本的に奇数の日。1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、そして9月9日。他の節句は行事や風習がちゃんと残っているのに、なんで9月9日だけが廃れてしまったのかな。不思議だ。明治政府が太陰暦から太陽暦に変える時に、それぞれの節句は祝日じゃなくなったらしんだけど、3月3日と5月5日は祝日のままだし。謎だよね。

菊の咲く時期じゃないから。というのもあるのかも。元々は太陰暦なわけだから、重陽の節句は今の10月中旬。その辺りで菊の花が咲くとしたら、9月だとまだつぼみか。それだと、お祝いしづらいのかな。うーむ。これは謎のままで終わりそうな予感がする。自然に忘れられてしまったものは、特にきっかけが無いことが多いからなあ。こんなことなら祝日として残しておけばいいのに。

もしかすると、祭りがあるかどうかも関係しているかも。そもそも、休みの日だとか。子供に受け入れられやすい行事だとかも。子供に馴染みやすい行事というのは、ちょっと説得力あるかもね。かもしれないばっかりで申し訳ない。でも想像する以外に情報がないもんだから。

9月9日以外は、子供にとっては休みか休みモードの時期だ。しかも3月5月7月は、子供が参加しやすい行事がある。この子供が大きくなって、親になっても子供が参加する行事は引き継がれやすそうだ。そう考えると、1月7日は七草粥と言っても少し影が薄い気がする。気がするだけかな。とりあえずひな祭りとこどもの日は強いよね。七夕はお祭りだし、夏休みだし。となると、重陽の節句は一番影が薄くなっちゃったのかなあ。
重陽の節句も子供のお祝いに絡めておけば、なんだか残ったような気がしてきた。まあ、そんなこと言っても同しようもないのだけどね。

ちなみに、重陽の節句には、菊の花を愛でたり食べたりして、お祝いをします。邪気払いで健康にという願いが込められているのです。これも、そのうち消滅してしまう文化だとしたら寂しいな。

今日も読んでくれてありがとうございます。おせち料理も、いつの間にか正月のものになっちゃったしね。だんだんと緩やかに変化していくもんだと言ってしまえば、まあそういうことなんでしょ。春夏秋冬でおせち料理を売り出してみようかしら。オードブルみたいな感じでさ。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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