もうすぐ「土用の丑の日」がやってきます。今年は7月28日がそれにあたるそうですね。もう知っている人も多いと思うけど、この日にうなぎを食べることを定着させるきっかけを作ったのが「平賀源内」。江戸時代の有名人の一人だね。というか、この人何者?
発明家として知っている人もいると思うけど、この人ホントいろんなことやってるんだよ。身分は武士ね。江戸時代中期の1728年生まれで、没年は1780年ということになっているから今から250年くらい前の人。ウィキペディアで調べると「本草学者、地質学者、蘭学者、医者、殖産事業家、戯作者、浄瑠璃作者、俳人、蘭画家、発明家」となっている。むちゃくちゃいろんなことやっているよね。ついでに、今で言うブローカーみたいなことまでやっているとは。この人が「本日、丑の日」というキャッチコピーを書いて、この日にうなぎを食べるという文化を定着させちゃったんだ。
そもそも、なんでこんな事態になったのか。その発端は近所の鰻屋さんだ。「夏になるとうなぎが売れなくて困る。源内さんなんとかならんかね。」と相談したそうだ。平賀源内は古今東西の知識を持っている江戸きっての知識人だし、頭もいい、相談したらなんか出てくると思ったのかね。コピーライターの仕事を依頼するわけだ。日本最初のコピーライターか?
で、考え出したのが「丑の日」は「う」のつくものを食べると健康になるという話。これ、源内さんが作り出したものだったんだね。とはいえ、医者であり薬剤師(本草学者)でもある人の言う「こじつけ」だ。それなりに意味のあるものをちゃんと考えた。うなぎ、瓜、うどん、梅干し、こういったものを食べると暑い時期には良いよとね。うなぎは精がつく、瓜は体温を下げて夏バテ防止だ、うどんは消化に良いし、梅干しは食欲をそそるってなもんだ。と言ったかどうか知らないけど、そんな感じで並べていった。
これを鰻屋の主人に教えてやって、でっかい看板に「本日、丑の日」と書かせた。そうすると通りかかった人たちが「なんでえこりゃあ」「今日はなんかあったのかい」と聞いてくるから、主人はいちいち「う」のつくものを食べると良いという話をしていくんだ。娯楽の少ない江戸の話だから、こういうちょっと面白いネタはすぐに広まっていくんだよね。「あすこの鰻屋で面白いことを言っているらしや」「そいつはおもしれえ、ちょっとからかいに行ってみるか」なんて具合に、どんどん人が集まる。鰻屋は大繁盛することになった。となれば、みんな真似するし毎年夏が来るたびに同じことをやるもんだから、250年たった今でも続いちゃったってわけだ。
夏になると鰻が売れなくて困る。というのは、現代人からしたら「??」かもね。だいたい鰻の旬は夏じゃないんだ。知らない人が多いから言うけど「うなぎの旬は秋から冬」だ。産卵期の少し前あたりで栄養を蓄えるのが旨い。産卵期になってしまうと卵に栄養を持っていかれるから痩せる。そして、産卵後には冬に備えて栄養を蓄え始める。これが鰻の生活サイクルね。だから、江戸っ子からしたら「夏に鰻?そんなもん食えたもんじゃねえよ。だいいちこう暑くっちゃあんなこってりしたもん口に合わねえ。」だったんだ。
この時代は養殖なんてないからね。天然うなぎの生活サイクルを考えると、当然そうなる。それは現代でも変わらなくて、ホントに鰻が好きな人は天然うなぎを夏に食べようとは思わないらしいよ。流行り物で夏も食べて、本物は秋冬に楽しむとか。
現代の鰻は養殖が大半だ。海外のものは知らないけど、国産のものは当然「土用の丑の日」に美味しい状態になるようにスケジュール管理している。掛茶料理むとうのうなぎは「浜名湖産のうなぎ」だ。つまり、全部養殖。この時期になると浜名湖の鰻の値段が上がってしょうがないんだけど、それだけ売れるってことなんだろうね。
ちなみに、「鰻は夏バテに効く」は栄養学的にも理にかなっている。ビタミンA、B1、B2、D、E。カルシウム、鉄分、亜鉛などのミネラル。脂質にコラーゲン。食欲不振や消化不良からくる栄養不足にはもってこいの栄養素ばかりだ。平賀源内さん、お医者さんだったからね。分かっていたのかもしれないよ。
今日も読んでくれてありがとうございます。現代人にはあんまり効果がないって言われている。というのも、江戸時代と違って「栄養が豊富」だからだ。鰻に頼らなくてもちゃんと栄養補給できているからね。エアコンもあるし。エアコン病の対策に水分補給をしっかりしたほうが良いくらいだ。とはいえ、夏の風物詩、心の栄養にはなるだろう。お江戸の風流を思いながら夏の鰻を楽しむのもまた一興というもんだ。