とても微量だけれども、ないと違うものになってしまうもの。
そんあものが、実は僕らの生活にとって大切なのかもしれないですね。
お寿司のワサビは苦手な人もいるかも知れないけれど、僕なんかはサビ抜きのお寿司はなんとも味気なくて物足りないと感じてしまう。お汁粉を作るときのほんのひとつまみの塩や醤油も、無いといまいち味の締まりがないと感じてしまう。
そういったことを感じたとき、得も言われぬ不思議な感覚にとらわれるのは僕だけでしょうか。
亜鉛、鉄、マンガン、セレン、ヨウ素、モリブデン、クロム。こういうのを食品と一緒に体に入れるのが大切だということは、最近ではよく知られています。一言で言ってしまえば「ミネラルをちゃんと摂取しようね」ということなのだけれど、このくらい微量になると体感することは難しいよね。料理を食べて「あ、これはマンガンが入っていていいね」というのを、僕は聞いたことがない。
ところが、この微量のミネラルたちが全くなくなってしまうと人体の機能を損なってしまうというから侮れない。
ミネラルは「超微量と健康」という両端の話ですね。
料理はそうじゃないから、もう少し気楽とも言えるかもしれない。けれど、サビ抜き寿司や塩分抜きお汁粉みたいに物足りなさを覚えることもあるし、中には違う料理になってしまうこともあります。胡麻豆腐を作るにはその名の通り胡麻が必須だということはわかりやすい。その胡麻の量は全体に比べたら大して多くはないけれど、胡麻がなくなったら胡麻豆腐とは呼べないとかね。それはそれで、料理として美味しく食べることは出来るのだけれど、違うものになってしまうのですよ。
僕たちの生活も、だいたい同じじゃないのかな。
もう覚えていないくらいの小さな経験がたくさんあって、そういうエッセンスが積み重なって今の暮らしになっているのだと思うのです。嬉しいことも悲しいこともたくさんあって、こその今。言葉にするとなんだか陳腐なセリフだなあ。
もしも、一つでも欠けたらどうなっていたのだろう。と考えてみると、それはそれで間違いなく僕であることは変わらない。けれど、「今ここにいる僕」とは全くの別人みたいになっていたかもしれないよね。
えーと。料理をしながらこんなことを考えるひとは、どのくらいいるのだろうか。
黙々と作業をしていると、ときどき思考が宙を遊んでしまうことってないですか。今日はそんな話でした。