エッセイみたいなもの

今日のエッセイ 洒落た芸名がついた料理 2021年2月18日

2021年2月18日

大根おろしで何かを和えると「みぞれ和え」って言うんだよね。

山芋とか自然薯で蒸し物を作ると「養老蒸し」になるし、

そういう名前って、なんだかいいなあと思うんです。

芸名というか、役名というか。ちょっと特別な「なにものか」になるような感じがするのです。

関西出身の杉本さんは、芸人になるときは明石家さんまさんになるわけだし、歌手の加山雄三さんは作品を作るときだけ山田さんと名乗っているわけです。

なんだか、どことなく良いなあと思うのだけれども、どうして良いと感じているのかはわからない。

ふぐだってね。

少し洒落た芸名がついても良いのかもしれないよね。と思うことがあります。だってね「てっぽう」ですよ。ふぐの薄造りは「てっぽう+さしみ」で「てっさ」です。てっぽうなんて、ちょっと物騒じゃないですか。そもそも、ふぐをてっぽうなんて呼ぶようになったのも「当たれば死ぬ」ってことですから。そりゃあもう物騒です。

そういうわけで、もうちょっとかわいくて美味しそうな名前ってないんだろうかと思います。

いっそのこと外国人みたいにしちゃいましょうか。英語名ならグローブフィッシュ、手袋の魚?全然美味しそうじゃないですね。中国語で「河豚」はどう発音していいのかわからないですけど、河にいる豚ですか。手袋よりは大分美味しそうです。食べられますから。

なんだか、もっとしあわせな名前が良いですね。嬉しくなっちゃうような。

刺し身が出てきたら嬉しくて踊っちゃうから、舞ちゃんとかどうでしょう。幸せな鍋だから幸福なべ。あぁ、ふぐって昔は「ふく」って表記されていたんでしたっけ。元々幸せな名前だったんですね。

じゃあ、別名はいらないくらいに、既に特別な「なにものか」なのだということでしょうか。

僕は武藤太郎です。料理人のときも武藤太郎ですし、家庭にいるときも武藤太郎です。カラオケで歌を歌っているときだって、やっぱり武藤太郎なのだ。何か一つくらい別の名前をつけてみようかしら。

そういえば、ふくの身の部分についている皮を身皮(みかわ)、表皮の裏に張り付いている皮を遠江って言うんですよ。三河(みかわ)の国(愛知県東部)の隣は遠江(静岡県西部)の国ってね。昔の板前さんのダジャレが正式名称になっています。

  • この記事を書いた人

武藤太郎

掛茶料理むとう2代目 ・代表取締役・会席料理人 資格:日本料理、専門調理師・調理技能士・ ふぐ処理者・調理師 食文化キュレーター・武藤家長男

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